非常に魅力的なムックでした。
美しい写真やデザイン、都会的な(良かれ悪かれスノッブな)文章が散りばめられており、読み流す分には刺激的で楽しめると思います。
美容室やカフェなんかに置いてあって、ゆったりと読まれるようかイメージでしょうか。
以下、「読み物」としての個人の感想を書きます。
「都市の未来とネイバーフッド」、「ネイバーフッドの逆襲」、という興味深いテーマに惹かれて購入したわけですが、目次と文章を何度か読みながすなかでこのwordの中で企画者が意図した根幹のようなものを汲み取ることができませんでした。主に「都市」とされる生活圏を前提として、コロナ前後を経た上での未来における都市生活の在り方を考えた本だとは思うんですが、デザインの斬新さを優先する(と少なくとも感じた)中でテーマや文章の核心や繋がりが曖昧なまま終始しているといえます。
62-63ページで「ご近所」と「ネイバーフッド」の違い(違うの??)や意味の持たせ方が語られていますが、そこで言及される「徒歩15-20分圏内に生活に公的サービスを始めとした必要な資源が全て配置されるネイバーフッド構想」の現代における有り難みがそもそもよくわかりません。これは15-20年前に安藤忠雄さんたちが語っていた都市構想と何がちがうのでしょうか?
都市から人が離れているのは、テクノロジーによる都市に暮らす恩恵と同じくらいか場合によってはそれ以上に、都市で暮らし続ける必要性や必然性が消失しているからに他なりません。むしろデメリットが明確に示される事例もあらわれました。そこがスペイン風邪やコレラの流行の時期に「都市の死」を招かなかったこととの大きな違いがあります。その部分に踏み込んだ言及や解説が無かったのは残念です。
まず、明確に意図するネイバーフッドを定義した上でバックグラウンドとしての前提と条件、現状と今に至るまでの経緯を明示したうえで形式的に起承転結をつけていただきたかったです。あと68-72ページは切り絵のような配置があまりにも読みにくかったです(エクスナレッジでもここまできついのはあまり見ません)。一方で、82-90、139-147は写真と文章が特筆すべきほど美しかったです。
色々書きましたが、いずれにしてもこの内容で1200円は安いと思います。満足しています。1500円なら星3つにしたと思います。