2025年2月23日(日)、10代の若者たちがアプリを開発し、その成果を発表する「Japan Wagamama Awards2025」の最終プレゼンテーションが東京都港区で行われました。
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10代がアプリで地域課題を解決!『Japan Wagamama Awards2025』グランプリ決定
若者が世の中を変える挑戦の場を作る「Japan Wagamama Awards」
2024年11月に立ち上がった本アワードは、文部科学省や全国19の自治体、教育委員会などが後援し、10代の若者たちがどこに住んでいても多様な挑戦ができる環境を整えること、そして、その挑戦を通じて地域や社会に貢献している実感を持てることを目的としています。
10代の熱い思いが詰まったプレゼン
オフラインで初となる本アワードには全国の71名がエントリー。ワークショップなどの審査を経て、8組13人が最終プレゼンテーションへと駒を進めました。
開発のテーマは『地域で暮らすたったひとりの大切な人のワガママを叶えるアプリ』。
壇上では1組7分で、アプリを作りたいと思ったきっかけやそこから見えた社会課題、それをアプリでどう解決するのかを発表。
クリエイティビティ、インパクト、デザイン、テクニカルスキルという基準で審査されました。
いくつかのアプリを紹介しましょう。
高齢者施設にいる曽祖母への愛情が生んだ超高齢社会を笑顔にする写真共有アプリ
施設に入っている曽祖母ともっと家族で繋がりたい、曽祖母にはもっと外の社会と繋がってほしい。
茨城県の高校2年柴陽菜乃さんは、そのような思いから、超高齢社会において高齢者が施設の暮らしをもっと楽しく、長生きしてよかったと思えるようにと、家族と安心して繋がれる高齢者向けの写真共有アプリを開発。
友達のように怪我をする人を減らしたいという気持ちから思いついた安全な移動を実現する位置情報共有アプリ
友達が登下校中に道路の穴にはまり怪我をした経験から、どこに穴があるのかを共有し、自転車事故を事前に防ぐことで、安心して登下校できるようにしたいと考えた岩手県の田村光惺さんと吉田朝陽さん。
さらに、「なぜ穴が開くのか」を把握できれば、そもそも穴ができること自体を減らせるのではないかと着目し、道路の穴を見つけたら記録・情報共有できるアプリを開発。
防災食が美味しくないという経験から思いついたローリングストックをサポートするスケジュール管理アプリ
自宅の炊飯器の都合で防災食を食べた際に、美味しく感じなかった経験から、「災害時でも美味しいものを食べたい」と考えた茨城県の大黑屋海斗さんと趙軒輝さん。
その思いから、「美味しい食事があれば、被災者が少しでも前向きになれるかもしれない」と発想を広げ、レトルト食品の賞味期限を管理し、適切に買い足せるローリングストック支援アプリを開発。
グランプリは中学2年生の2人が受賞
今回が初のオフライン開催となった本アワードでは、2名がグランプリに輝きました。
受賞したのは栃木県の佐野帆那さんと北海道の福永紗良さん。ともに中学2年生です。
忙しい母を助けたいということから始まった地域のSDGsにも向き合えるレシピ提案アプリ「ちょクック」
栃木県の中学2年生・佐野帆那さんが開発したのは、料理好きだけれど忙しい母親が、栄養バランスを考えつつ、材料を無駄にせずにレシピを考えられるようにしたいという思いから生まれたアプリです。
レシートの写真を撮るだけでAIがレシピを提案する仕組みで、食品ロスの発生量が全国でも多い栃木県の課題にも向き合いました。
このアプリ開発では、佐野さんの「忙しい母親の力になりたい」という気持ちと、それを形にする行動力が高く評価されました。特に、今回の参加者の中でも最も熱心に学び、唯一AIとOCRの技術を組み合わせてレシートを解析し、レシピを生成する仕組みをほぼ自力で完成させた点が大きな注目を集めました。さらに、メンターやテクニカルチームも思いつかなかった技術の組み合わせを実現したことも決め手となり、受賞に至りました。
受賞について佐野さんは次のようにコメントしました。
自身の経験から同じ悩みを抱える人を救いたいと開発した不登校生徒専用の友活マッチングアプリ「Hapi Fure」
不登校でもリアルに友達と会って遊びたい。ゲームをしたり、おしゃべりしたりしたい。近くに同じ境遇の仲間がいたら、友達になれるのに──。そんな思いを抱いていたのが、北海道の中学2年生福永紗良さんです。
さらに、独自に調査を進めたところ、不登校の生徒の8割がリアルで会える友達が欲しいと言っていることがわかったそうです。
そこで開発したのが、近隣に住む不登校の友達を探し、チャットで交流できるアプリです。
このアプリ開発では、自分の気持ちを言語化し、考えを整理しながら理想のアプリを形にしていく思考力、そして、理想を実現するための開発への熱心な取り組みが高く評価されました。
さらに、MITの『アイデアさえあれば誰もが解決者になれる世界を作りたい』という精神にも通じる形で、福永さんは当事者として課題と向き合い、自ら解決の側に回ったことも受賞の決め手となりました。
受賞について福永紗良さんは次のようにコメントしました。
今、私は元気に生きているけど、自分のように苦しんでいる人を少しでも救えるきっかけになるのではないかと思って参加しました。
最初の1ヵ月くらい、体調を崩すなどがあって出遅れてしまい、かなり焦ったんですが、メンターの方や開発の方などにも夜遅くまで協力してもらってこうして形にできたことを感謝しています。
そして今日、参加してくださった方々から私の開発したアプリに対して素敵なコメントをいただいて、伝わってよかったな、やってよかったなと嬉しい気持ちが溢れました。
グランプリに選ばれたからには、もっともっと今回の課題を深掘りしていきたいと思っています。
今回グランプリとなった佐野さんと福永さんは2025年7月にマサチューセッツ州ケンブリッジで開催される『MIT AI & Education Summit』への参加権を獲得しました。
地域から最新技術を。運営の思い
株式会社IRODORI取締役 永井彩華さん
主催であり、最終プレゼンの審査員も務めた株式会社IRODORI取締役の永井彩華さんにお話を伺いました。
IRODORIは地方創生、地域の課題解決を主軸にしてきた企業です。
地域で挑戦や好きな生き方ができないと、どんどん若者たちは離れてしまう。だからこそ若者と地域が応援をし合う仕組み作りにこだわっていきたいと思っています。
今回のプレゼンもイベントにとどまらず、実際に子供たちが抱える課題を地域で解決できる仕組みにしていくということを目指しています。発表にもあった不登校分野についても連携協定を結んでいる自治体と協力し、地域を巻き込みながら取組んでいく予定です。
また、アプリ開発というテーマについては、『世界の技術を牽引していこう』とするMITの研究室に、現在日本人の視点が入っていないこと、ルールメイキングが行われるこの瞬間に日本人がいないことに危機感があります。そのため、日本人をもっと世界の技術の最先端に送り出し、具体的にはMIT入学者を10年で100人増やすという目標を掲げ、今後もこのようなイベントなどに取り組んでいきます。
地域の若者から最新技術が生まれ、そして地域から日本の課題が解決されていく。そういった未来を感じるイベントでした。
次回のアワードは2026年。募集は2025年の秋に開始とのことです。
(取材 伊藤真二)
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「ちょクック」開発者 佐野帆那さん
母の職場のお友達に勧められて参加しましたが、こういったイベントに参加したのは初めてで、プログラミングは苦手だし、英語だし、最初はすごく不安でした。
取組んでいく中では、なにより課題の深堀りが一番大変でしたが、開発の方やメンターの方に、どのように動けばいいのか背中を押してもらったことで、このような賞をもらうことができました。
学校の授業でもこういったことはしたことがなかったので、本当にいい経験になりました。嬉しく思っています。
今回のイベントに限らず、地元が大好きなので、これからも地域のために貢献していきたいと思います。