「アメリカより高課金率だったのは、カナダ・オーストラリア・イギリス」gumi・ポノスらが語るゲームアプリの海外展開。

2015年03月20日 |
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1月に開催されたメタップスさん主催「Native Gaming Summit 2015」より、「日本のゲームアプリの海外展開について」の講演をお届けします。

metaps_nativegame_summit

<司会>
株式会社メタップス 山田雄介さん

<登壇者>
株式会社gumi 執行役員 佐々木智之さん
ポノス株式会社 取締役 永谷朋行さん
クローバーラボ株式会社 代表取締役 小山力也さん

各社さん、簡単に自己紹介をお願いできますか?

小山(クローバーラボ):
クローバーラボの小山と申します。「ゆるドラシル」というタイトルをつくっている大阪の会社です。

永谷(ポノス):
ポノスの永谷です。「にゃんこ大戦争」をはじめ、京都で15~16本ぐらいのスマホゲームをだしている会社です。全アプリの累計で今3,500万ダウンロードくらいですね。

佐々木(gumi):
gumiで国内、及び海外向けアプリのリリース管理をしております、またAlimさんの「ブレイブフロンティア」も海外向けはgumiが担当させて頂いております。

「Think global, Act local」ということで、単に翻訳するだけでなく、各国のユーザーに最適化してタイトルを届けるということに取り組んでいる企業です。

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リアクションが大きかった国は?

皆さんが海外展開されてきた中で「ダウンロードが伸びた」「評価がよかった」「課金された」という国はどこでしょうか?

佐々木(gumi):
「ブレイブフロンティア」の例になるのですが、フランスのユーザーさんが非常に熱狂的だなと感じました。

ブレイブフロンティアの生みの親である早貸氏がフランスの展示会イベントにいった際、サインを求めるファンの列ができたことがありまして、同じようなことがアメリカでもありました。

日本のゲームが、海を越えて北米や欧州で受け入れられたことは、とても励みになりますね。

「ブレイブフロンティア」はフランス語にも対応しているんですか?

佐々木(gumi):
はい。ブレフロは「英語版」「ヨーロッパ版(複数言語)」「中国語版(繁体字・簡体字)」など14言語、世界67の国や地域に向けて配信しています。

ポノスさんはいかがでしょうか?

永谷(ポノス):
まずユーザーさんの「ゲームに対する熱狂度」はやっぱり韓国が一番すごいなと。ゲームに対するクレームもそうですし、求められるクオリティも非常に高い。

韓国は、ゲームをつくる側としては「本気で挑まないと返り討ちにあってしまう」ような市場です。

そして「儲かる国はどこか?」という意味では、やっぱりアメリカを含めた英語圏だと思っています。

アメリカ向けに英語のゲームをつくれば、そのままオーストラリアもいけるし、カナダもいけてと、「ぐるっと世界一周楽しかったね」という感じで収益をあげることができます。

「海外展開どこいこうかな?」と迷った時は、お金稼ぐことを優先するなら、とりあえず英語圏を狙うのが良いんじゃないかなと思っております。

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ちなみに「にゃんこ大戦争」はフランス語は検討されていますか?

永谷(ポノス):
フランスも翻訳できる人がいたらやりたいですね。というのも「にゃんこ大戦争」って関西のギャグのテイストが盛りだくさんのゲームなんですね。

「このギャグをフランス語でいうと、どうするの?」という時に、まじめに直訳してしまうと、めちゃめちゃ寒いゲームになってしまうんですよ。

なので、「おもろいフランスの芸人さん」などが採用できれば、すぐにでも出したいです。

クローバーラボさんが「ゆるドラシル」の海外進出にあたって「パブリッシャーとの交渉がやりやすかった国」はありますか?

小山(クローバーラボ):
まだリリース自体は出来ていないのですが、交渉については韓国の会社さんがすごいシビアだと感じました。

逆に「このアプリはポテンシャルがあるから、うちでやらせてくれ!」という感じで、親日的に話をもってきてくれたのは、台湾の会社さんでしたね。

どの国に投資しているか?

今までどこの国に一番「人・モノ・カネ」を投資してきたか?とその理由も教えて下さい。

佐々木(gumi):
弊社は北米で、アメリカとカナダに投資をしています。市場規模はもちろんですが、人材をすごく発掘しやすいところに魅力を感じております。

というのも、担当するプロデューサーやディレクターが、そのコンテンツを好きになって「ファンになりきれるか」というのがとても重要だと考えているためです。

熱意がありすぎて「勝手に壁紙をつくって配っていた」という事もあったりして驚く事もありましたが、そのくらい熱意をもってゲームをつくるのは、東アジアよりも北米のスタッフに多いと感じています。

ポノスさんは、いかがですか?

永谷(ポノス):
ポノスは韓国に一番投資をしました。なぜかというと、はじめての海外展開が韓国だったので「これは、外せないな」と思ったのが理由です。

市場調査というか「何が流行っているのか?」「このテイストって韓国でおもしろいのか?」のような調査をして、1年半ぐらいかけて準備しましたね。

あと、ゲーム内で世界地図を回るんですけど「日本をスタートにして、韓国に攻めにいくってやばいんじゃないの?」みたいな、歴史背景を踏まえた微調整も大変でした。

結果的には、おかげさまでうまくいって、「どこまでカルチャライズすべきか?」のような、カルチャライズノウハウが、ある程度たまったのは良かったです。

そしてスタッフに「実は言語を変えるってけっこう簡単だな」という印象を持ってもらえたのも良かった。

「にゃんこ大戦争」は、次にどこの国に進出する予定ですか?

永谷(ポノス):
まじめにご回答すると次は中華圏ですね。中国メインランドでまずやってみて、台湾・香港・マカオにも出そうと考えています。

実は「にゃんこ大戦争」の英語版をつくって、管理画面でいろんな国にポチポチと配信設定して、リアクションを見てみたことがあって。

やってみた結果、興味がわいたのはタイですね、東南アジアも含めてすけど。

あと課金率、「お金を使ってくれる国はどこか?」というと、カナダ・オーストラリア・イギリスの順番だった、この3国はアメリカよりも課金率が高かったです。

もう1つ、多くダウンロードされた国は、意外にもロシアが圧倒的に多かった。次いでドイツ、フランスと続いていく感じでした。

この辺りを候補にして「ユーザー数をとるか、課金をとるか?」を考えながら、中国の次に展開する国を選ぼうと考えています。

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※「にゃんこ大戦争」のゆるキャラテイストが、欧州でも受け入れられるのが興味深い。

海外展開で困ったこと。

「海外展開で一番困ったこと」を教えていただけますか?

佐々木(gumi):
海外ですごく困ったのは、「圧倒的にチーターが多い」ということです。いわゆる「不正ツール」が、日本と比べると、挙げればきりがないぐらい多いです。

中国の腕利きハッカーが猛攻撃してきたり、あと韓国もレベルが高かったり、英語圏のハッカーが、自分でつくったツールをGitHubに上げていたりと多種多様です。

やはり「不正ツール」で一番困るのは、正規のユーザーさんがしらけてしまうことなんです。「もう馬鹿らしい」とゲームやめてしまうんですね。そこがほんと深刻な問題です。

国際的に活躍する専門家にも相談してチーター対策をしましたが、コストをかけて対応しても次から次へと出てきますね・・・。

ポノスさんの「海外展開で一番困ったこと」はありますか?

永谷(ポノス):
2つありました。まず、ひとつが「デバッグが大変」ということです。

韓国みたいな「ハイスペックな端末が当たり前」という国もあれば、中国のように「端末の性能がてんでバラバラ」という国もある。

例えば、古い端末にあわせてしまうと、ハイスペック端末を持っている人たちにとっては「演出がつまらない」となってしまう。

逆にハイスペック端末にあわせると、途上国ではまだまだ主流のOSバージョンを切り捨てなくてはいけないという問題がでたり。そこのバランスがけっこう難しいなと。

そして、もうひとつが「海外版の責任を誰がもちますか?」という話です。

ゲームの施策を打つとき「にゃんこ大戦争を日本で成功させたプロデューサー」と「海外展開のために採用した、ネイティブの外国人スタッフ」のどちらの意見を尊重するか、ものすごく迷います。

どちらがいいのか、まだ答えが出てないんですけどね。これからも、ずっとついてまわる「嫌な問題」なんだろうなと思います。

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※イメージ図

参加者からの質問

海外でリリースするとき「現地でどのようなプロモーションをするか?」というのは、どのように決定されているのでしょうか?

永谷(ポノス):
ポノスでは2つやってます。1つ目は日本の広告代理店も、海外プロモーションにけっこう対応できるようになってきてますので、そこの話を聞くのがまず1つ。

もう1つは、現地の会社に会ってみること。飲みにいったりして仲良くなって「現地の会社が当たり前にやるプロモーションってなんですか?」と教えてもらっています。

海外の現地の会社は、ググれば出てくるので、普通に自分の足で会いにいくのがいいのかなと思います。

「グローバル展開」は、どの段階で意識されていますか?「ゲーム設計時」から考える必要があるのでしょうか。

佐々木(gumi):
弊社の場合、ゲームの開発段階では「まず、その国で売れるものを最優先してつくりましょう」と共有しています。

「世界観」や「ゲーム性」を考える段階で世界展開を考えだすと、あれこれ考えなきゃいけない事が出てきすぎて、視野が狭くなったり何も決められない状態になりがちです。

たとえば「東南アジアは通信環境がよくないから」という話を企画段階からしてしまうと、「結局どこの国でも売れない」みたいなアプリになってしまう。

「十字架をこの国で出すのやばいんじゃないの?」みたいな細かいカルチャライズに関しては、その国にリリースする前に必ずチェックする体制をとっています。

取材協力:株式会社gumi、ポノス株式会社、クローバーラボ株式会社、株式会社メタップス

編集後記

「世界の英語人口」を調べたところ、ざっくり17~18億人(うちネイティブが3~4億人)いるそうです。

もちろん「イコール英語圏のスマホ人口」ではありませんが、スケールの大きさは知っておきたいですね。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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