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34歳の男が家事育児をしながら思うこと。いわゆるパパの教科書には出てこない失敗や感動をできるだけ正直につづる育休コラム。
家電ASCIIの盛田 諒(34)です、おはようございます。水曜の育児コラム「男子育休に入る」の時間です。2月に赤ちゃんが生まれて2ヵ月間の育児休業を取り、「育児って地獄で幸せなのがすごいですよね」など身辺雑記をものしてきました。
ふしぎなもので、育児をはじめると、それまで気にもとめていなかった育児系の話題が目に飛びこんでくるようになります。最近だと「石鹸CM」「独身税」「中学生体罰」など引火性ある話題が次々とTLに流れ、火をくべられていきました。炎上やむなしという話題も多いのですが、中には、批判がちょっと疑問に思えるものもありました。
自分がおなじ立場にあったら、絶対に正しい判断をすることができるだろうか、という疑問です。きっかけは赤ちゃんとの自動車旅行です。ある一線を踏み超えるだけで、簡単におそろしい行動をとりかねないことに、ゾッとしました。
●チャイルドシートは難しい
先月末、遅まきながら夏休みをとって北軽井沢に行ってきました。お盆を外したので多少は空いていましたが、アウトレット付近は大混雑、たくさんの観光客が闊歩し、何かの優勝パレードのようになっていました。中国語や韓国語がよく聞こえたので、そういうツアーがあるんだろうと思います。
赤ちゃんにとっては初めての自動車旅行、6ヵ月児として初めてのチャイルドシートを着けることになりました。しかしこれが育児グッズの例に漏れず厄介で、
・選ぶのが難しい
・取りつけが面倒くさい
・赤ちゃんを入れると泣く
などで悩まされました。
チャイルドシート選びは難しいです。
ふだんクルマに乗っていないこともあり、チャイルドシートの種類や規格がよくわからず、見るほど沼に足をつっこんでいる気分に。結局、1週間以内の短期間でレンタルができる業者を探し、そこで扱っている製品から選ぶことにしました。
基本的には「適用月齢」と「固定タイプ」の違いがあり、メーカーやクラスごとに、それぞれ特長が分かれています。適用月齢はそのままで、新生児から使えるチャイルドシートでも、終齢は「15ヵ月まで」「4歳まで」と様々です。
固定タイプは2種類。
1. シートベルト固定タイプ
2. 「ISOFIX」固定タイプ
ISOFIX(アイソフィックス)というのは、日本国内では2012年7月以降発売の自動車についている、チャイルドシート取りつけ装備品の規格です。自動車の座席についている金具にコネクターをガチャンとするだけでつけられるという便利仕様です。
今回の自動車旅行で使ったクルマ(ちょっと前のホンダ フィット)はISOFIX対応ではなかったので、シートベルト固定タイプから選ぶことにしました。
あとの違いは「360度回転する」「女性でも簡単に取りつけられる」「赤ちゃんが寝ていてもベビーキャリーとして移動できる」などですが、実際にチャイルドシートを使ったことがないので、比べても、いまひとつ良さがわかりませんでした。
結局、「コンビ チャイルドシート プリムベビー・グッドキャリー」を選びました。
理由は安さと軽さです。自宅のマンションから自動車がある場所までもっていくので、重いとキツいというので安直に選びました。ちなみにメーカー終売です。
しかしいざ取りつけることになると「取りつけやすい」の意味がわかりました。
チャイルドシートを後部座席に置いて、シートベルトでしっかり固定するには、けっこうな力と、コツがいります。女性1人だと難儀するのではと感じました。
チャイルドシートをクルマに乗せるとき、シートベルト固定用パーツを探すとき、チャイルドシートを傾けるのはオラオラという具合に力がいります。軽いものを選んだので助かりましたが、これが大きくて重かったら相当苦労していたと思います。
取りつけは「シートベルトを前後に通す」と一見簡単なのですが、シートベルトをめいっぱい伸ばしてから固定用パーツに通すのは案外難しいです。「パーツどこだよ!」とかんしゃくを起こしそうになりました。大人なのでガマンしました。
そして取りつけたあと赤ちゃんに入ってもらうのですが、まあ泣きました。個人差もかなりあると思いますが、わが家の赤ちゃんはたいへんよくお泣きです。
往路はチャイルドシート入っただけでおやすみになっていたのですが、復路はちょっとでも入れようとする気配を見せただけでゴギャパー!! とシン・ゴジラのように泣かれるため、そのたびおっぱい・ミルク・おもちゃの威力に頼ることとなりました。
以上のように面倒が重なってくると、「ちょっとくらいなら……」という、絶対にしたがってはいけない声をささやく悪魔があらわれてきます。
●「ちょっとなら」の怖さ
1つ目の声は、「ちょっとの距離ならチャイルドシート装着しなくても……」です。
「クルマで15分くらいの近さにあるスーパーに行くだけだから」とか、「ちょっと先のレストランに着いたらすぐ降りるから」とか、悪魔は一般人の顔をしています。
しかし、警察庁によればチャイルドシート不使用者の致死率は使用者の約11倍。チャイルドシートは身長135~140cmに満たない6歳未満の幼児がつけるシートベルトのようなもの。ちょっとの距離で事故を起こして、大事になったら、悔やみきれません。
子供を守るチャイルドシート 警視庁
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/childseat.html
JAFの調査を見てみると、5歳児のチャイルドシート使用率は40.9%。1歳未満の87.1%から半分以下に激減しています。年齢が上がると、チャイルドシートをいやがることも増えると思うのですが、年齢が上がっても、危険なことは変わりません。
2017年 チャイルドシート使用率データ 警視庁・JAF合同調査
http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/data/childdet2017.htm
実家がカーディーラーをやっているという知り合いの女性は、身長120cm、130cmという2人の子供がいるのですが、「車の事故がどれだけ怖いものなのかを話しているので、2人ともシートに座るのは嫌がりません」と話していました。ドリンクホルダーがついた座布団タイプのシートを使っていて、快適そうに座っているそうです。
女性は、「車は自動走行時代に突入し、安全装備も付いてという安心感は確かにありますが、安全装置がはたらかない衝突のケースもあります。装置まかせにせず、補助シートを正しく使い、親として子供にできる安全対策はできる限り講じてほしいと思います」とも話していました。
もう1つは、「ちょっとの時間なら車内に寝かせて買い物してきても……」です。
駐車場に停めたとき、赤ちゃんがチャイルドシートで寝ていると、せっかく気持ちよさそうにしているのを邪魔したくないし、「ちょっとだけなら置いたまま買い物してても大丈夫かな」と思ってしまう気持ちは、絶対にだめですが、よくわかります。
JAFの試験結果を見ると、気温35℃の炎天下に駐車した車内の熱中症指数は、窓を閉め切った状態でエンジン停止後、わずか15分で危険域に達しています。夏場、ガソリンスタンドで給油をするとき、ほんの数分間エアコンを切っているだけで、車内が地獄のように暑くなることを思い出すと、実感としても、とてもよくわかります。
大切な家族の熱中症事故にご注意を! JAF
http://www.jaf.or.jp/profile/news/file/2017_30.htm
チャイルドシートの中には、座席からはずし、ベビーカーに入れたり、ゆりかごのように使える、「トラベルシステム」という便利な種類があるそうです。寝た子を起こさないままクルマから出たいと思ったら、機能をしっかり使いこなし、ほんの一瞬でも危険な状況をつくらないことが大事なのだなと感じました。
以前、テレビなどで「車内に子どもを放置して熱中症にしてしまった」というニュースを見たときは「想像力がない親がいるもんだな」と感じていましたが、自分の感想こそが、絵に描いたような想像力の欠如でした。自分の知っている情報だけで、つきはなすようなコメントをしてしまうことのおそろしさに、ぞっとさせられます。
しかし、子供まわりの話題を見ていると、こうした怖い認識のズレが多々あることにも気づかされます。最近で言うと、保育園騒音問題がありました。
●「うるさい」のはなぜ?
8月30日、読売新聞に、
「園児の声うるさい」武蔵野の保育園、開園延期
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170830-OYT1T50006.html
という記事が載っていました。
吉祥寺南町に認可保育園(吉祥寺駅徒歩10分、敷地面積約1400平方メートル)開園が予定されていましたが、園児の声を懸念する近隣住人と自治体が話し合いをした結果、自治体が住人の理解を得られず、開園を延期した、という内容です。
記事についた「『園児の声うるさい』という人たちの自己主張の方がよほど『うるさい』と感じるのは私だけでしょうか」など批判的なコメントが支持を得て、批判が批判を呼び、怒りの風船をふくらましていく、いわゆる炎上状態になりました。
しかし、記事を読んだのですが、あまりよくわからなかったです。
園児たちの声や生活音が、環境省の騒音規制基準にもとづいて、公害とみなされると予想されていたとすれば、自治体(運営主体)が防音など対策を検討するはずです。逆に、騒音が迷惑といえず、住環境に影響を与えないのなら、問題になる理由がわかりません。
そもそも、そのくらいの議題は話し合いの最初に出てくるはずで、自治体と住人がどんな話し合いをしていたのかわかりません。
自治体が「保育園を開くことにした、理解して」などと合意ありきの説明をしていたら、反感を買うこともありそうだなと思いますが、詳細はわかりません。おなじ地域にはすでに保育園があるので、そちらはよくて、こちらがダメという理由も、わかりませんでした。
どんな人が、どんな背景から、園児の声を懸念していたのかも、よくわかりません。たとえば聴覚過敏があるなど、もともと大きな音を苦手としている人の意見ならうなずけるところがありますし、それなら対策を考える必要があると思います。
ちなみに批判の中には近隣住人を高齢者とみなした意見も見かけましたが、記事には高齢者とは書いてありません。「子育て世代vs理解のない高齢者」という感情がかきたてられるイメージを、しぜんと想像してしまったのではないかと思います。
待機児童の赤ちゃんをもつ親としては、件の保育園には無事開園できてほしいと思うのですが、人格攻撃のようなコメントが支持を集めるのは、ただ怖いと感じました。対立をいたずらに深めるだけに思います。よかれと思って怒っているのかもしれませんが、それがなおのこと怖いです。
「園児の声うるさい」という見出しを通じて読者に疑問を投げかけた読売新聞には、ぜひ、より広範な、保育園騒音問題全体の詳報を期待しています。
●わかりやすい怒りが一番怖い
長くなってしまいましたが、炎上した記事は、どちらかが非常識だとあっさり言いきれるような、シンプルな問題ではないように思えます。
信じられないほど悪質な話題に「最悪」とコメントがついていると「たしかに最悪だ、みんなに知らせよう」と、反射的に教えたくなる気持ちが生まれます。しかし信じられない事態の背後には、ありきたりな判断の誤り、複雑な状況の連鎖など、本人の悪意とは関係のない不幸な事情が多々あるものだと思います(本当に最悪な人間もいるとは思いますが)。
赤ちゃんは、ちょっと目を離したすきに、コンセントをなめようとしたり、ビニール袋を頭からかぶろうとしたり、信じられないような危険なことを次々とやりたがる、ロックな生き物です。不幸な事故はけっして他人事ではなく、紙一重の場所にあるものだと、育児をしていると感じます。
わかりやすい怒りというものは、人を心の底にひきずりこんでいく、とても怖いものです。ひどい話をひどいと言って他人事で終わりにするのではなく、問題を考え、調べて、自分の判断基準を更新していくほうが楽しいと思います。そんなわけで、次の自動車旅行では、トラベルシステムを使いこなしたいと思いました。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中。
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