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日本ユニシスと日本マイクロソフトの“BankVision on Azure”正式採用

北國銀行が勘定系Azure移行決定、「地域のデジタル化」貢献も視野に

2019年11月22日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 地方銀行の北國銀行(本店:石川県金沢市)は2019年11月21日、日本ユニシスの開発する勘定系システム「BankVision」の稼働基盤として、日本マイクロソフトが提供するパブリッククラウド「Microsoft Azure」の採用を決定したと発表した。フル機能を備えた勘定系システム(フルバンキングシステム)のパブリッククラウド上への実装は国内初となる。2021年中盤の本番稼働開始に向け、導入プロジェクトを正式にスタートする。

 同日には北國銀行、日本ユニシス、日本マイクロソフトの3社による記者発表会も開催された。北國銀行からは、今回の勘定系クラウド移行は最新の中期経営計画において重要視しているITシステム戦略の一環であること、コスト削減や業務効率化だけでなく、将来的な「BaaS(Banking-as-a-Service)提供」や「地域を巻き込んだデータ連携のエコシステム構築」も視野に入れた取り組みであることが説明された。

北國銀行が採用を決定した勘定系システム“BankVision on Azure”の全体イメージ。「データ活用基盤」「オープンAPI基盤」も備える

(左から)米マイクロソフト Microsoft Solutions Corporate VPのコーリー・サンダース(Corey Sanders)氏、日本ユニシス 取締役常務執行役員の葛谷幸司氏、北國銀行 専務取締役の杖村修司氏、日本マイクロソフト 執行役員常務 サービス事業本部長の内田聡氏

「ただ生き残るだけでは意味がない」地銀の使命を果たすためのデジタル変革

 今回の発表は、2018年3月に日本ユニシスと日本マイクロソフトが発表した“BankVision on Azure”プロジェクトにおける、初の正式採用ケースとなる。

 これまで日本ユニシスでは、北國銀行を含む地銀10行に対しBankVisionを提供してきた。これは日本ユニシスが運用するオンプレミス環境で稼働するASP形態のもので、各地銀はBankVisionの勘定系処理機能をサービスとして利用している。他方で、日本ユニシスと日本マイクロソフトでは2016年度から、Azure上でのBankVisionの実装に向けた共同検証を進めてきた。

 発表会に出席した北國銀行 専務取締役の杖村修司氏はまず、なぜ中堅地銀である北國銀行がこうした先駆的な取り組みをするのか、という点から説明を始めた。

北國銀行 専務取締役の杖村修司氏

 よく知られているとおり、人口減少やマイナス金利政策、さらにはキャッシュレス政策など、銀行業を取り巻く経営環境は厳しさを増しており、収益構造も大きく変化している。北國銀行ではそうした変化を先取りするかたちで、15年前から店舗削減などの業務効率化、さらに新たなビジネスモデルの開発などを進めてきた。その結果、すでに「これから5年、10年、このままでも間違いなく生き残れる」(杖村氏)経営体質の改善を図ることができているという。

 しかし杖村氏は、地銀としての使命を考えると「ただ生き残ればいい、というものではない」とも強調する。事業基盤である北陸三県(石川県、富山県、福井県)を変革し、発展させていくことが、北國銀行にとって「最大の命題」だからだ。「継続的に地域の発展に貢献していくためには、もう一歩戦略を進めなければいけない」(杖村氏)。

 そうした背景から北國銀行では今月、2018年3月に策定した中期経営計画を見直し、2024年3月までを計画期間とした新たな中期経営計画「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション2024」を発表している。この新中期経営計画では、顧客志向をより深化させ、地域全体のイノベーションに貢献する「次世代版 地域商業銀行」を、将来の目指す姿として掲げている。

北國銀行の目指す姿は、顧客志向を深化させた「次世代版 地域商業銀行」だという(「新中期経営計画 コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション2024」より)

 この新中期経営計画において、北國銀行が重要視しているのが「システム戦略」だ。他行とは大きく異なり、「勘定系(BankVision)のクラウド移行」や「サブシステムのxRM化/基盤統合とクラウド移行、内製化」「次世代インターネットバンキングの独自開発」といった積極方針をとる。こうしたシステムの実現を通じて、生産性向上と運用コスト/災対コストの削減を図り、戦略システムの新規開発への投資をIT投資全体の「7~8割」程度にまで引き上げていく方針だという。

 「このシステム戦略をトリガーに、さらなる経営戦略をどんどん実行していきたい。それはわれわれのためというよりも、地元の中小企業のお客様にクラウドを広めていくため。デジタルトランスフォーメーションとシステムのモダナイゼーションを『地域で』進め、お客様を巻き込んだ(データ活用の)エコシステムも作っていく。それがわれわれの目指すところだ」(杖村氏)

北國銀行のシステム戦略。勘定系、サブシステム含め積極的にモダナイズとクラウド化を進め、IT投資の7~8割を「戦略的開発」に充てられるようシフトしていく

 今回発表した勘定系BankVisionのAzure移行は、この2024年に向けたシステム戦略の一環となる。すでに今年9月にはAzureを基盤とした新しい個人向けインターネットバンキング「北國クラウドバンキング」をリリースしており、今後は2021年のBankVisionクラウド化にあわせて、現在120ほどあるというサブシステムのxRMプラットフォーム統合、法人向けインターネットバンキングのリリースなどを計画している。さらにその先の2024年をめどに、より多くのクラウド化メリットを享受できるBankVisionのPaaS化も考えていると説明した。

北國銀行の今後のシステム計画。勘定系システム以外のクラウド化も順次進め、内製も強化していく方針

 なお、このシステム戦略を推進していくために、北國銀行では同日、東京に新しいシステム子会社「デジタルバリュー」を設立した。データ活用促進のための開発力強化を目的としており、FIXERや日本ユニシスといったパートナー企業の知見も生かしながら、システム面から北國銀行グループにおけるサービスの高度化をサポートしていくという。

北國銀行が考えるシステム戦略の最終イメージ。地域のデータ連携基盤、そしてBaaS提供も視野に入れている

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