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140億円の追加調達で顧客サポート・開発速度を10倍に

情シスのSaaS管理を代行 ジョーシスが“健康診断”から“治療”まで

2024年10月09日 11時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 ジョーシスは、2024年10月8日、新サービスとしてSaaS管理の状態を診断する「SaaSドック」とSaaS管理の最適化を代行する「SaaSキュア」を提供開始した。

 SaaSドックとSaaSキュアは、「管理者の特定」や「不要なアカウントの削除」、「権限変更」といった、SaaS管理において人の判断を介する“ラストワンマイル”を埋めるサービスであり、ITデバイスとSaaSの統合管理クラウド「ジョーシス」のユーザー向けに提供される。

 ジョーシスの代表取締役社⻑CEOである松本恭攝氏は、「我々は、テクノロジーとサービスを融合させることで、SaaS管理におけるセキュリティの向上、コスト最適化を実現するラストワンマイルにコミットしていく」と説明する。

ラクスル 代表取締役会⻑ 兼 ジョーシス 代表取締役社⻑CEO 松本恭攝氏

テクノロジーだけでは解決しないSaaS管理の“ラストワンマイル”を解決

 現在、DXの進展でSaaS導入が加速する中、新たな社会的な課題が生まれているという。それは「情報漏えいリスク」と「デジタル赤字」だと松本氏は言う。

 SaaSによって情報がクラウドに移り、「設定ミス」や「退職者によるアクセス」、「取引先のデータ持ち出し」など、さまざまな経路で情報漏えいが発生するようになった。サイバー攻撃者も、セキュリティが脆弱なシャドーITや関係会社、取引き先などからSaaS上のデータを狙うようになり、セキュリティ・スコアカードの調査では、日本のサイバー被害の48%が取引先経由の攻撃によるものだという。

セキュリティ・スコアカードの調査では日本の情報漏えいの約半数は取引先経由

 もうひとつの課題は、海外ITベンダーのサービスを利用することで生じるデジタル赤字であり、2023年には5.5兆円に達している。しかし、ジョーシスの400社のユーザーデータを分析すると、1か月以上利用がなかったり、割り当てられていなかったりする「削除余地のあるアカウント」は、アカウント内で25%も存在するという。少なくとも無駄なアカウントを削除するだけで、コストは最適化でき、デジタル赤字も軽減される。

 ジョーシスは、これらの社会課題を解決するプラットフォームとして、従業員を起点にとしたSaaS管理サービス「ジョーシス」を提供しており、2021年の提供開始から600社以上に利用されてきた。新たにグループ会社のSaaSを本社で一元管理できる「マルチテナントポータル」の機能を提供開始するなど、プラットフォームの機能強化も進めている。

「マルチテナントポータル」機能、グループ会社のシステムを刷新することなく本社管理が可能に

 しかし、テクノロジーだけで解決できないのが、人が介する「社内コミュニケーションの課題」だ。たとえば、未使用なアカウントを見つけても、情シスの現場では本当に削除してよいかを判断できず、責任者を探し出して、さらに意思決定まで待たなければいけない。結果、多くのコミュニケーションコストが発生する。松本氏は、「SaaS管理には優れたテクノロジーが必須であるが、結局は、社内を動かせないと優れた管理にはならない」と強調する。

 このSaaS管理におけるラストワンマイルともいえる最適化の課題を、テクノロジーに“人の力”を融合することで解決するのが、新たに提供される「SaaSドック」「SaaSキュア」である。

 SaaSドックは、企業のSaaSの利用状況を診断するサービス。ジョーシスを用いた可視化に加えて、各部門へのアンケートやインタビューなどの人を介した包括的な調査を実施。SaaS管理者や管理上の不適切な点を特定して、診断書という形で改善案を提案する。

 そして、SaaSキュアでは、診断結果からユーザーとポリシーを作成、それを基に不要なアカント削除や権限変更といったSaaS管理の最適化に必要な作業を全面代行する。

 SaaSドックは単発の利用料金、SaaSキュアは年間契約での料金で提供され、現時点では価格は未決定。まずは日本のユーザーへ展開される。

SaaSドックとSaaSキュア

 実際、ジョーシスはSaaSドックを自社内で試しており、海外拠点を含む250名の従業員、40個のSaaSを診断している。その結果、新たに13人のSaaS管理者、5つの許可されていないSaaSを特定、管理者の半数は過剰権限を付与されていたことも判明した。極めつけは、アカウントの16%(690個)は削除可能なものだったといい、これは年間3700万円ものコスト削減につながる。

SaaSドックの成果物のイメージ

140億円の追加調達で顧客サポートを10倍、開発速度も10倍に

 ジョーシスは、同タイミングで国内外の商業銀行よる140億円のベンチャーローン調達も発表した。これで同社の創業以来の資金調達は累計319億円に達した。

 この追加調達の投資先は、2024年10月に海浜幕張で開設した「ジョーシスSaaSオペレーションセンター」に充てられる。同センターは、カスタマーサポートを担うSaaSの専門家チームが運用するもので、現在は20名体制だが、2025年には10倍の200名規模にまで拡張する予定だ。SaaSドックとSaaSキュアも同チームが提供する。

ジョーシスSaaSオペレーションセンター

 追加調達のもうひとつの投資先が、プラットフォーム開発だ。ジョーシスは積極的な海外展開を進めており、米Gartnerが2024年に公開したSaaS管理プラットフォームの「マジック・クアドラント」では日本ベンダーで唯一選出された。グローバル展開を更に加速すべく、シリコンバレーとインドにおけるプラットフォーム開発に2年で100億を投資して、開発速度を10倍へと引き上げる予定だ。

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