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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第309回

トランプ2.0で、AIブームに拍車?

2024年11月12日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 2024年11月5日に投票が行われた米大統領選で、トランプ元大統領が4年ぶりに政権に返り咲くことになった。

 トランプ次期大統領の2期目の任期は2025年1月20日から4年間だが、トランプ氏が選挙中から主張してきたさまざまな政策から、テクノロジー業界には大きなインパクトがあると予測されている。とくにGAFAMを含むビッグテック各社や、AI関連サービスを提供する各社、仮想通貨業界への影響は極めて大きいと見られている。

 仮想通貨やAIに関連する業界については現時点で、規制緩和の面で前向きな変化が期待されている。一方、トランプ氏は、1期目の任期中(2017年1月~2021年1月)から、フェイスブック(現メタ)をはじめとしたビッグテック各社と対立を続けてきた。それだけに、フェイスブックやグーグル、アマゾンに対しては、引き続き厳しい姿勢で臨む可能性が高いとみられている。

AI関連サービスは商機?

 AI関連のサービスを提供する業界をめぐっては、第二次トランプ政権で商機が訪れるという期待感が生じている。その最大の要因は、イーロン・マスク氏の存在だ。11月7日のCNBCの報道によれば、マスク氏は、今回の大統領選で、トランプ氏の支援のため、少なくとも1億3千万ドル(約197億円)を投じたと報じられている。

 マスク氏はこれまで民主党を支持しており、2020年の大統領選ではジョー・バイデン現大統領に投票したことを明言していたが、2024年には一転してトランプ氏への支持に転じた。マスク氏が所有する企業のひとつで、宇宙関連の事業開発を進めているスペースXは、米国の連邦政府から多額の事業を受注している。比較的新しい分野で、急速充電網の展開などインフラ整備が欠かせない電気自動車も、時の政権の政策に浮沈が左右されやすいビジネスと言える。このためマスク氏は、トランプ氏を支持し、次期政権との関係を強化することで、自社のビジネスに有利な政策に誘導する狙いがあると、あちこちで指摘されている。

 さらに、連邦政府の支出を削減するために設立される新しい組織のトップにマスク氏が起用される見通しだ。マスク氏はすでにX上で、連邦政府の無駄な支出について、ツイートを始めている。

 政府の支出削減を進めるうえで注目されるのが、AI関連のサービスだ。業務の自動化を進め、人員を削減することで、支出の削減も実現するという狙いがある。さらに、欧州ではAIに対する懸念の高まりからAI規制に関する法整備が進んでいるが、マスク氏が新政権で要職に就いた場合、欧州とは対照的にAI関連の政策も規制緩和に振れる可能性がある。

 また、バイデン政権下では、連邦取引委員会がOpenAIやマイクロソフト、NVIDIAといったAI関連の主要企業を対象に、独占禁止法などに違反する行為がないか調査しているが、こうした政府の対応についても、トランプ氏の返り咲きで変化する可能性がある。

仮想通貨の展望は明るい?

 トランプ氏の再選で、マスク氏率いるテスラの株も大幅に上昇したが、それ以上に仮想通貨(暗号資産)の価格は上昇した。11月6日には、ビットコインの価格は日本円建てで1,100万円を突破した。

 仮想通貨関連の各社がトランプ氏に多くの選挙資金を寄付し、トランプ氏は7月に「アメリカを世界の暗号資産の首都、ビットコイン超大国にする」と述べている。バイデン政権下では、大手取引所FTXトレーディングの経営破たんなどもあり、米政府の仮想通貨に対する見方は厳しくなっていたが、新政権では仮想通貨についても規制緩和の流れが強まると予測されている。

 トランプ氏は、ビットコインの「戦略的備蓄」についても、選挙中に発言している。各国の中央銀行は準備資産として金を保有している。金を保有することで、自国の通貨の信頼性を高めるなどの意味があるが、こうした準備資産にビットコインを加えるという構想だ。議員が関連する法案の準備を始めたという報道もある。実際に、米政府が準備資産としてビットコインの調達に踏み切る場合、さらなる価格の上昇要因になるかもしれない。

ビッグテックとは引き続き対立しそう

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