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新たな最上位エディション「Enterprise Advcanced」の採用促進が鍵

Box Japan新社長・佐藤氏、新年度は“AI民主化”“市民開発の加速”目指す

2025年02月28日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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2月1日付でBox Japan 社長執行役員に就任した佐藤範之氏(中央)。説明会には、代表取締役会長に就任した前社長の古市克典氏(左)、米Box COO(最高執行責任者)のオリビア・ノッテボーン氏(右)も出席

 Box Japanは2025年2月26日、新社長に就任した佐藤範之氏が出席する新年度(FY26:2026会計年度)の事業戦略説明会を開催した。佐藤氏は、「インテリジェントコンテンツ管理プラットフォーム」を掲げるBoxとして、FY26は日本の顧客企業で“AIの民主化”を実現していくなどの方針を示した。

Box Japan 今年度(FY26)のフォーカスエリア。製品においては、新エディションと新ツールを通じて“AIの民主化”“市民開発の加速”実現を目指す

国内顧客は2万社超え、グローバル売上の24%を日本が占める

 佐藤氏はまず、昨年度、FY25のBox Japanにおけるハイライトを振り返った。

昨年度(FY25)の振り返り

 ビジネス面では、製品ライセンス、コンサルティングサービスとも売上は好調。国内顧客者数は2万社を超え(グローバルでは12万社)、日経225企業の77%がBoxの顧客になったという。ITRによる国内のコンテンツ・コラボレーション市場シェア調査(売上金額ベース、2024年度予測)でも、38.2%とシェア1位をキープしている。グローバルのBoxにおける日本の売上比率もさらに拡大し、24.0%(FY25 Q1~3)まで伸びているという。

 顧客企業層も、エンタープライズ(従業員数2000人以上)から中堅企業(501~2000人)や中小企業(500人以下)へ、また首都圏(関東圏)から他エリアへの拡大の動きが見られた。FY25の新規受注高における構成比率は、中堅企業+中小企業が3割を超えており、関東以外のエリア売上も4割を超えた。

 「Boxは(社内だけでなく)外部のお客さまとコラボレーションするツールでもある。そのため、大手のお客様が導入いただくことで、サプライチェーン上の中小のお客様にもプロモーション効果があり、売上が進んだものと考えている」「(関東圏以外では)関西エリアが代表的だが、トヨタグループ様での導入が寄与して中部地方の売上も非常に伸びている」(佐藤氏)

 既存顧客の契約更新(継続利用)比率も、高い水準を維持していると述べた。これについては、“容量無制限”という特徴のほか、セキュリティ/データ保護機能や他のシステムとの連携機能、顧客の導入フェーズに合わせたカスタマーサクセス活動などが背景にあると説明する。

 また、Box Consultingサービスも高い成長を続けているという。佐藤氏は、導入支援だけでなく、コンテンツ管理プラットフォームとしての“あるべき姿”の提言や、セキュリティリスクの分析など、幅広いコンサルティング活動を行うことで数字を上げていると紹介した。

“AIの民主化”と“市民開発の加速”を目指した新エディション

 FY25はもうひとつ、AIを中心に据えた新たなプラットフォームを展開する動きもあった。さまざまなアプリケーション(SaaS)から収集したコンテンツを、Boxプラットフォームを介して、さまざまなAI(LLM)で処理するための基盤だ。

 今年1月には、すべてのAI機能が使える新たな最上位エディションとして「Enterprise Advcanced」を提供開始したほか、2月にはすべてのエディションで一部のAI機能を利用できるよう拡張を図った。

 佐藤氏は、Box AIが顧客に評価されているポイントとして、外部のAIサービスを利用してデータ処理を行う際、Boxでアクセス権限を管理しながらセキュアにコンテンツ活用ができること、また、AI活用のROI(投資対効果)がまだ見えずコストがかけにくいなかで、Boxでは追加コストなしでAI処理ができることがあると説明する。

(左)AI機能やインテリジェントなワークフローが使える「Enterprise Advcanced」をリリース (右)その他のエディションでも一部機能を開放して“AIの民主化”を促している

 今年度も、プロダクト面では引き続き「Box AI」などのAI関連機能が重点項目となる。

 佐藤氏は“AIの民主化”と“市民開発の加速”という2つのキーワードを挙げた。AIの民主化は「社員全員がAIを使える」環境の実現、また市民開発の加速は、ノーコード開発ツールの「Box Apps」を軸に据えて、Box AIの能力も活用したインテリジェントなワークフローなどを実現する。

 このいずれもが、前述したEnterprise Advcancedエディションを前提としたものになる。佐藤氏によると、現在の売上の半分以上は、以前の最上位エディションである「Enterprise Plus」が占めているという。今年度の目標は、Enterprise Plus顧客をターゲットに、その「2割強」をEnterprise Advcancedにアップグレードしてもらうことだとした。

ノーコード開発ツールのBox Appsを軸に据え、Box AIの能力も加えて、コンテンツワークフローのさらなる自動化/インテリジェント化を図る

 AIによるワークフロー自動化を実現するための重要な要素として、佐藤氏は、ドキュメントから特定項目のデータを自動抽出する機能を紹介した。たとえば、請求書のドキュメントをBoxにアップロードすると、請求金額に応じて申請先を変更した承認ワークフローが実行される、といった仕組みが構築できる。

 「LLMにコンテンツの中身を要約してもらうだけでなく、AIの力を最大限活用する。AIを使って、非構造化データ(ドキュメント)を構造化データに変換(情報抽出)することで、ワークフローの自動化、機密文書へのラベル付けによる情報漏洩防止、といったことを実現していく」(佐藤氏)

 なお、インテリジェントなワークフローについては、すでに顧客の数社がユースケースを決めて実装を進めている最中だという。今後、日本市場に適したユースケースも幅広く提案していきたいと述べた。

(左)Box AIでメタデータを自動抽出した例 (右)ドキュメントの内容(請求金額)に応じて、承認ワークフローの承認者を切り替える例

 FY26のGo to Market戦略については、従来からある6つのセグメント別営業体制(大企業、中堅企業、中小企業、地方企業、金融、公共)を継続し、それぞれのセグメントに適したプランを実行していく方針だ。

 またBox Japanの社内組織としては、組織の拡大に合わせて権限委譲を進めていることを紹介したうえで、社員のエンパワーメントもより強化していきたいと述べた。「古市から受け継いだ、Box Japanとしての強みは伝統としてしっかり生かしながら、積極的に変えていくところは、市場変化をにらみながらどんどん変えていく」(佐藤氏)。

COOのオリビア・ノッテボーン氏は、Boxとして、今年度は新しい“コンテンツ+AI”の分野でリーダーポジションを築きたいと語った

Box Japan会長に就任した古市克典氏は、今後は「顧客企業のエグゼクティブとのリレーション強化」「佐藤新体制へのスムーズなトランジション」「Box Japanの新プロジェクト」に取り組んでいくとした

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