Windows 10の最新バージョン「Windows 10 バージョン21H1(May 2021 Update)」がリリースされました。Windows Server Update Services(WSUS)などの配布管理ツールを導入していない中小企業を対象に、機能更新プログラムが意図せずインストールされてしまうことを防止する、現在のバージョンで利用可能な方法についてまとめます。WSUSを導入済みの場合については、別の機会に取り上げます。
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2021年5月18日(米国時間)、「Windows 10」の最新バージョン「Windows 10 バージョン21H1(May 2021 Update、OSビルド19043)」がリリースされました。
Windows 10 バージョン21H1は、Windows 10 バージョン2004(OSビルド14041)/バージョン20H2(OSビルド14042)とOSのコア部分を共有する、小規模なアップデートです。品質更新プログラム(累積更新プログラム)は共通で、Windows 10 バージョン21H1の新機能はこれまでの累積更新プログラムで既に提供済みであり、非アクティブ化されている状態です。
現在、Windows 10 バージョン2004またはバージョン20H2を実行している場合は、Windows Updateを使用して「有効化パッケージ」形式の機能更新プログラムを受け取ることができます。有効化パッケージは、非アクティブ化されている新機能をアクティブ化し、バージョン情報を切り替える小さな更新プログラムであり、1回の再起動で、短時間でアップデートが完了するという利点があります。
Windows 10 バージョン1909以前に対しては、数GBの大きな機能更新プログラムで大規模なアップデートとして提供されます。こちらはWindowsの“アップグレードインストール”であり、数時間かかります。また、一部の設定がリセットされる可能性もあります。「Windows 10のダウンロード」サイトからアップデートアシスタントやISOイメージを使用してアップグレードする場合も同様です。
なお、ボリュームライセンスのWindows 10には「Windows 10のダウンロード」サイトの方法は利用できません。ボリュームライセンスのWindows 10については、「Microsoftボリュームライセンスサービスセンター」(VLSC)でダウンロード提供されるメディアを使用する必要があります。
機能更新プログラムの配布管理に対応した「Windows Server Update Services(WSUS)」「Microsoft Intune」「Microsoft Endpoint Configuration Manager(旧称、System Center Configuration Manager)」、その他のサードベンダーの配布管理ツールを導入していない場合、半年ごとにリリースされる「半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)」のWindows 10の新バージョンは、Windows Update経由で機能更新プログラムとして提供されます。
Windows 10の初期バージョンとは異なり、現在サポートされているバージョンでは、機能更新プログラムがすぐに自動配布(ブロード展開)されることはなくなりました。
例えば、2020年5月にリリースされたWindows 10 バージョン2004のブロード展開(自動更新による配信)が宣言されたのは、リリースから8カ月後の2021年2月です。2020年10月にリリースされたWindows 10 バージョン20H2のブロード展開が宣言されたのは、7カ月後の2021年5月18日、Windows 10 バージョン21H1がリリースされたその日です。
新しい機能更新プログラムがリリースされてしばらくは、「設定」アプリの「更新プログラムのチェック」をクリックした先進ユーザーに対して、利用可能であるという案内が通知されます(画面1)。
また、一般提供が開始されてすぐに「更新プログラムのチェック」をクリックした全てのPCで利用可能になるわけではなく、提供対象は段階的に拡大されます。2020年5月19日以降は自動更新の一部として、Windows 10 バージョン20H2を受け取るかもしれません。ユーザーが「ダウンロードしてインストール」をクリックすることで、はじめてダウンロードとインストールが始まります。機能更新プログラムの案内通知がなくても、「Windows 10のダウンロード」(https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10)サイトからアップデートアシスタントまたはISOイメージを入手してアップグレードを開始することもできます。
機能更新プログラムに対応した配布管理ツールを導入していない企業や組織の場合、機能更新プログラムの案内通知があると、IT担当者が意図していないタイミングでユーザー自身がアップグレードを開始してしまうという可能性があります。使用しているPCのハードウェアや業務アプリケーションに互換性の問題がある、あるいは未確認の場合は、ユーザー自身によるアップグレードはトラブルの原因になりかねません。
そこで今回は、Windows Updateに機能更新プログラムの案内を表示させない方法と、アップグレードのタイミングを制御する方法を紹介します。
Windows 10 Pro以上のエディションの場合、「Windows Update for Business(WUfB)」のポリシーを適切に構成することで、Windows Updateの機能更新プログラムの案内通知を非表示にできます。
それには、「ローカルグループポリシー」または「グループポリシー」で以下の場所にある「プレビュービルドや機能更新プログラムをいつ受信するかを選択してください」ポリシーを有効化します。
このポリシーで、「受信する更新プログラムのWindows準備レベルを選択してください:半期チャネル」を指定し、「プレビュービルドまたは機能更新プログラムがリリースされた後、受信を延期する日数」に一般向けリリースから何日延期するかの日数を指定します(画面2)。この設定で機能更新プログラムを最大で「365日」延期できます。
1つ注意点があるとすれば、設定された延期日数が過ぎると、対象の機能更新プログラムのブロード展開が宣言されているかどうかに関係なく、Windows Updateが機能更新プログラムを自動インストール対象として検出し、ダウンロードとインストール、つまり機能更新プログラムの受信が始まってしまうことです。
以下の画面3は、Windows 10 バージョン2004(2021年10月21日一般向けリリース)を実行するPCで「7日間」機能更新プログラムの受信を延期するように設定し、2021年10月末の時点でWindows Updateを実行したものです。
機能更新プログラムが利用可能である案内が表示されることなく、Windows 10 バージョン20H2の機能更新プログラムのダウンロードとインストールが始まりました。
そのため、機能更新プログラムを評価、検証する十分な期間を考慮して、適切な日数を設定することが重要になります。延期ではなく、期限を設定せずにブロックしたいという場合は、この後説明する「機能更新プログラムのバージョンの固定または指定」を利用してください。
なお、以前あった更新チャネル「半期チャネル(対象指定)」(SAC-T)はWindows 10 バージョン1903で廃止されました。また、「設定」アプリの「Windows Update」の「詳細オプション」の「更新プログラムをいつインストールするかを選択する」は、Windows 10 バージョン2004で廃止されました。
Windows 10 バージョン1803(既にサポート終了)以降、WUfBの新たなポリシーとして「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」が利用可能になりました。このポリシーを有効化して適切に構成することで、機能更新プログラムの受信をブロックしたり、途中のバージョンを飛ばしてアップグレード先のバージョンを指定したりできます。また、このポリシーが有効になっていると、機能更新プログラムの案内通知が来なくなります。詳しくは、以下の連載記事を参考にしてください。
「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」ポリシーの「機能更新プログラムのターゲットバージョン」には、Windows 10 バージョン2004以前の「YYMM」(YYは西暦下2桁、MMは月2桁)形式のバージョン番号、またはWindows 10 バージョン20H2以降の「YYH1」(H1は上半期)または「YYH2」(H2は下半期)形式のバージョン番号を指定します。
現在実行中のWindows 10と同じバージョン番号を指定すると、新たな機能更新プログラムがリリースされてもそれをブロックします(画面4)。
途中のバージョンを飛ばしてさらに新しいバージョンを指定することで、アップグレード先を“明示的”に指定することも可能です。なお、同じバージョン番号の指定による機能更新プログラムのブロックは、現在のバージョンのサポート終了から「60日間」有効です。それを超えると、新しい機能更新プログラムを受信するようになるようです。
このポリシー設定を新しい機能更新プログラムをいち早く導入する目的で使用することもできます。例えば、2021年5月19日時点で「プレビュービルドや機能更新プログラムをいつ受信するかを選択してください」ポリシーを未構成のまま(または1日以上の数日の延期設定)、「機能更新プログラムのターゲットバージョン」に「21H1」を指定すると、Windows 10 バージョン21H1の段階的なロールアウトに関係なく、Windows 10 バージョン21H1を受信することになります(画面5)。
Windows 10 Homeエディションではポリシー設定はサポートされませんが、筆者がWindows 10 バージョン2004のHomeエディションで確認したところ、「ターゲット機能更新プログラムのバージョンを選択する」に相当するレジストリを作成することで、Homeエディションでも同様の効果(ブロックまたはアップグレード先の指定)を得られることを確認しました。具体的には、以下のコマンドラインを管理者として実行します(画面6〜8)。
REG ADD HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsUpdate /v TargetReleaseVersion /t REG_DWORD /d 1 /f
REG ADD HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\WindowsUpdate /v TargetReleaseVersionInfo /t REG_SZ /d <バージョン番号> /f
正式にサポートされている方法ではありませんが、企業においてもプリインストールPCなどでHomeエディションが導入されている場合があるでしょう。そのような場合に機能更新プログラムの配布を制御する方法として活用できるかもしれません。
最後に、2021年5月11日に、Windows 10 バージョン1803とバージョン1809のEnterprise/Educationエディション、Windows 10 バージョン1909のHome/Proエディションのサポートが終了しました。これらのバージョンを実行しているPCが残っている場合は、速やかにサポート期間中の後継バージョンにアップグレードしてください。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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