「今日と明日と、2日間の面会だから。あれも言い忘れた、これも言うときゃよかったということがないようにね」 大阪拘置所の職員からそう促され、女性はここに収容されている弟との面会に臨んだ。 弟は、2日後に死刑が執行されると決まったばかりの死刑囚だ。 弟はこの日も、翌日も姉と思い出話を続けた。職員に「名残はつきないが」と遮られると、姉に「笑って別れましょう」と言い、絞首台に向かっていった。 一連の音声は1955年、当時の拘置所長が「職員教育」の名目で回したオープンリールのテープに残っていたものだ。 かつては執行の1~2日前に、その予定を死刑囚に伝えていた時代があった。 いまは違う。死刑囚は執行の1~2時間前に告知を受け、刑場に連行される。 こうした運用について、2人の死刑囚が国を相手に提訴した。不服申し立ての制度があるのに行使できず、不必要に残酷だ。「適正な手続きによらなければ処罰されない」と定