虎視眈々と狙っていた 生涯最大の勝負 ジョージ・ソロスが生涯最大の勝負に出たのは1992年。英国の通貨「ポンド」に対して、売りを仕掛けた時である。 当時、欧州では本格的な通貨統合に向け、参加各国は、ドイツ通貨「マルク」に対する自国通貨のレートを一定の水準に維持することが義務付けられていたが、英国としては1ポンドを2.95マルク、最低でも2.77マルクに維持しなければならなかった。 しかし、この時の英国経済は下降線を辿っている状況であり、この為替水準は、経済の実勢に見合うものではなくなっていた。そして、「経済実勢に見合わない為替水準」が、英国の景気の足をさらに引っ張る悪循環に陥り始めていた。 92年7月になると、ポンドは「割高ではないか」という雰囲気が出始める中で、売り圧力に押され、2.85マルク近辺に下がっていった。 ソロスは、こうした動きをじっと観察し続け、生涯最大の勝負に出る時を虎視