東日本大震災から1年以上が経ち、復興に向けてまい進するはずの三陸の漁港で、その絆にほころびが出る事象が起きている。 宮城県石巻市の水産加工会社の役員が嘆く。「魚の奪い合いです。獲れる魚の量が極端に減るなかで、加工会社は会社を存続させるために必死になって魚をかき集めようとする。一致団結して復興を協議してきたが、今はそんな空気ではない」 なぜ、魚が減っているのか。直接の原因は、今年の4月に改定されたある基準値だという。 厚生労働省は今年4月、食品に含まれる放射性セシウムの安全基準を厳格化。500ベクレル/1kgから100ベクレル/1kgへと5分の1に引き下げた。国民の健康や安全、そして日本の食料品の安全性を海外に向けて訴えるという意味では、厳格化は仕方のないことだ。 だが、その基準の変更が、被災地の水産業の復興に大きな足かせとなっているという。「漁師が魚を取らなくなった。500ベクレルの時は基
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