イスラエル人の映画監督デヴィッド・ヴァクスマン氏と映画プロデューサーで人権活動家のパレスチナ人、モハマド・ババイ氏。二人がNHKと共同製作したドキュメンタリー『World Lost Justice 正義なき世界で』が11月7日NHK BSスペシャルで放送される。常軌を逸したガザへの虐殺をイスラエル国内ではどのように受け止められているのだろうか。(前後編の後編)
評価は真っ二つに アメリカで2週連続1位を獲得した話題作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が日本でも大ヒットしています。週末動員ランキングで初登場1位を記録しました(10月4日~10月6日興行通信社調べ)。誰もが知っている大スターが出演しておらず、日本ではさほど関心が高くないと思われていただけに予想外のヒットといえるでしょう。 アメリカ大統領選が迫っていることに加え、2021年の連邦議会議事堂襲撃事件の衝撃や、トランプ暗殺未遂事件に象徴されるアメリカ社会の緊張が、近未来のアメリカの内戦という筋書きに対する興味をかきたてた可能性があると思われます。ところが、その評価をめぐって賛否両論というか、意見が真っ二つに分かれているのです。 主な批判の一つは、本国でも多数の人々が指摘したように、「この映画は、政治的な主張をしようとしているようだが、結局中途半端に終わっている」というものです。つまり、現
10月4日に公開され、週末動員ランキングで初登場1位となるなど反響を呼んでいるA24の最新作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』。分断が深まり、国を二分する内戦が起きたアメリカを描いたディストピア・アクション映画だ。 CINRAが配信するPodcast番組『聞くCINRA』では、ライターのISOさん、映画や音楽に関するMC・ライターとして活動する奥浜レイラさんと、本作について語り合うエピソードを配信。番組の一部を抜粋して紹介する。 ※記事では、物語後半の内容に触れています。あらかじめご了承ください。 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、連邦政府から19もの州が離脱したアメリカが舞台。共和党支持者が多いテキサスと、民主党支持者が多いカリフォルニアが同盟を組み、「西部勢力」として政府軍と対立。激しい内戦に突入していた。 物語の中心人物は、崩壊間際に迫ったアメリカの姿を取材するジャーナリスト
Culture / Feature 軍事アナリスト小泉悠と、シャララジマ&リサタニムラが語る映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 2024.10.22up 現在、公開中の『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、A24が史上最大の予算で製作した注目作。アメリカの分断が進んだ国内戦争を描く本作について、軍事アナリスト小泉悠と、モデルのシャララジマとエディターのリサタニムラが意見を交換。各々が考える見所、監督の意図、本作のテーマとは。 ※一部ネタバレがありますので、ご注意ください。 今回取り上げる作品は…… ストーリーの舞台は、連邦政府から19の州が離脱し大規模な分断が進んだアメリカ。各地で西部勢力と政府軍による内戦が勃発している。キルステン・ダンストが演じる戦場カメラマンのリー・ミラーと戦場カメラマン見習いのジェシー、ジャーナリストのジョエル、ベテラン記者のサミー、老若男女4人組は、ホワイ
もしもアメリカの分断が進み、国を崩壊させるような内戦が起きたらどうなるのか。10月4日(金)に公開されたA24による最新作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、そんな構想から生まれた映画だ。 連邦政府から19もの州が離脱し、共和党支持者が多いテキサス州と民主党支持者が多いカリフォルニア州が同盟を組み、政府軍に対抗する「西部勢力」をつくる――。一見するとありえない設定にみえるが、秩序が保たれなくなった末に起きる数々の争いや暴力行為は、世界中でいま起きていることをふまえると、途轍もなくリアルにも感じられる。 監督を務めたアレックス・ガーランドは、「この物語は現実と地続きである」としたうえで、「右派と左派の観客が喧嘩をせずに議論できるような、双方に共通点がある映画をつくりたかった」と語る。この作品の狙いは何だったのか、インタビューで聞いた。 あらすじ:連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。
自分が子どもの頃、『まんが日本の歴史』といった類の学習漫画を除けば、通っていた小学校の図書館においてある唯一の漫画が『はだしのゲン』(中沢啓治)だった。 子供たちに原爆の悲惨さ、戦争の悲惨さを伝える作品という平和教育の一貫という立ち位置で置かれていたのだと思う。 特に説明する必要のない大メジャー作品であるが、念のため説明すると、戦中戦後の広島で主人公のゲンたちが理不尽なものに対する怒りを抱えながらバイタリティーいっぱいに必死に生きていく姿を描いた、作者・中沢啓治の被ばく体験など自伝的要素が反映された作品である。 1973年に『週刊少年ジャンプ』で連載がスタート、ジャンプでの連載終了後に革新系の雑誌である『市民』、日本共産党系の論壇誌である『文化評論』、日教組(社会党の支持母体の一つであった)の機関紙『教育評論』と掲載誌を移しながら1987年に連載が終了する。ジャンプ以降の連載誌を全て共産党
仁科芳雄の「伝記」を書いた人間として(1)、映画『オッペンハイマー』を観ると考えずにはいられないのは、仁科とオッペンハイマーの関係だ。彼らが直接会ったことは少なく、一見、あまりかかわりがないかのようではある。しかし、実は両者は深いところでつながっていた。そのことについて書きたい。 仁科芳雄とオッペンハイマーが直接会う機会はあっただろうか。二人がヨーロッパにいた時期は一部重なっていたが、滞在場所がずれていた。どこかの学会で顔を合わせた可能性がないわけではないが、それがあったとしても記憶に残るような交流がなかったことは、のちの手紙でわかる。仁科は欧州留学から日本に帰る前、1928年に米国各地を訪問し、12月にカリフォルニア工科大学やカリフォルニア大学バークレー校を訪問している。しかし、オッペンハイマーはまだそこに着任していなかった(2)。 結局、仁科がオッペンハイマーと直接会ったのは1950年
ヴァンデの虐殺自体は長谷川先生の「ナポレオン(覇道進撃)」の第一巻で語られていたので知った人も多いと思うが、真正面から描いてるマンガがあるのは知らなかった! これ、昔木原敏江さんの漫画で読んだなぁ... サンジュストをヒロインの幼馴染みしたりしてロマンチックに味付けし読みやすくしていたけど、かなり残酷な展開だった。。(調べ直したら「杖と翼」という作品でした) https://t.co/WStoS57f2K— odatch*_* (@odatch1207) 2024年7月28日 杖と翼(1) (フラワーコミックスα) 作者:木原敏江小学館Amazon杖と翼番外編 1 悲歌 elegie (プリンセス・コミックス) 作者:木原敏江秋田書店Amazon 最後まで読みましたが、ルイ16世処刑後からのフランス革命を描きながら、ちゃんとヴァンデー地方における虐殺を真正面から描いてますね。主人公は革命政
映画「オッペンハイマー」を観てきた。良作だった。 この作品は2023年にアメリカで公開され、第二次世界大戦を扱った伝記映画として歴代最高の興行収入を記録するなど、世界中で話題となっている。しかし、この映画の注目すべき点はその興行成績だけではない。この映画がどのように原子爆弾の開発と使用に伴う罪悪感を扱っているのか、その点について本ブログでは考察する。映画の詳細に触れるところがあり、ネタバレが含まれるので注意していただきたい。 二つの罪悪感について この作品は、原爆投下が必要だったという見解への反論を含みつつも、アメリカ国内で広く支持されている。この支持は、国際的な政治的駆け引きにもかかわらず、アメリカ人が内面の真実を優先したことを示しており、その点で尊敬に値する。 映画のラストシーンでは、オッペンハイマーの「一つの良い世界を破壊してしまった」という感慨が示される。このシーンは、彼の真の罪悪
クリストファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』は劇場で繰り返し鑑賞するに値する傑作だ。映像と音響による物理学的内容の表現、複数の視点の交差、時間軸を行き来する叙述、主人公の心象の映像化など、『メメント』『インセプション』『インターステラー』『テネット』といった作品でおなじみのノーラン監督の技法にいっそう磨きがかかっている。名優が次々と登場して繰り広げる印象深い場面の数々、多数の伏線が配置された複雑な展開、『ダークナイト』にも増して深刻な問いを投げかける重厚なテーマ。これらが合わさって感覚と理知の両方を刺激し、3時間の長さでも緊迫感が続く。 この映画を観たとき、筆者は不思議な感覚に包まれた。それはまず、物理学史上のさまざまな登場人物がこのように注目を浴びている映画の中に当たり前のように登場していることだ。現代物理学史というマイナーな研究分野にいて人知れず研究しているつもりだったのに、
〝原爆の父〟と称される天才物理学者の半生を描いた「オッペンハイマー」。第二次世界大戦末期、広島、長崎に投下された原爆開発の舞台裏と天才科学者の葛藤を、壮大なスケールで映像化。日本公開までに曲折を経た一方、アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞など7部門を制覇。賛否渦巻く問題作を、ひとシネマが独自の視点で徹底解剖します。 「American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer」。直訳では「アメリカン・プロメテウス:オッペンハイマーの勝利と悲劇」となるこの文が、映画「オッペンハイマー」の原作となった書籍のタイトルである。映画冒頭のナレーションにもあったように、戦争をもたらすきっかけとなった 〝火〟を人類に与えるギリシャ神話の男神プロメテウスで、〝原爆の父〟を形容しているフレーズだ。 この伝記と、それを膨ら
映画『オッペンハイマー』がついに日本公開された。原爆を開発した物理学者の半生を描いた作品だ。本作での原爆投下の描き方に賛否が集まるなか、映画監督の森達也さんは「オッペンハイマーは原爆投下後の広島と長崎の映像を直視できない、そんな弱い人間として描かれる。だからこそ僕たちは、それがどれほどの惨状であるかを間接的に想起できる」という――。 対立しているようで、微妙に違う 今年3月12日、広島在住の高校生や大学生ら約110人を招待して、日本では初めての『オッペンハイマー』一般向け試写会が、被爆地である広島市の映画館で開催された。 上映後には平岡敬たかし元広島市長と詩人のアーサー・ビナード、そして僕がステージに上がり、映画の感想を述べてから、観客からの質問にも答えた。 これを伝える多くのメディアでは、平岡元市長の「核兵器の恐ろしさが十分に描かれていないと思った」をまずとりあげ、これに対して僕が言った
© Universal Pictures. All Rights Reserved. © Universal Pictures. All Rights Reserved. 近年、映画『オッペンハイマー』以上に賛否両論の度を越して醜聞と賛辞が噴出した作品はなかっただろう。 本作はクリストファー・ノーラン監督に、自身初『アカデミー賞』作品賞受賞の栄誉をもたらした。しかし一方で、現代の価値観に則って言い逃れし難い批判も存在しているのもまた事実だ。その一部はここでも紹介しているが、本作は政治的には必ずしも正しい作品ではないかもしれない。しかしその先で、映画監督としてクリストファー・ノーランが世界に対して描き出そうとしたものがたしかにあった。それは一体何だったのだろうか。ライター/マンガ研究家の小田切博が論じる。 ※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
町山智浩さんが2024年3月25日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『オッペンハイマー』について話していました。 (町山智浩)それで今日、紹介する映画は結構ヘビーなのですが。やっと『オッペンハイマー』という映画が日本で今週、公開されます。 (石山蓮華)ついにですね。 (町山智浩)この『オッペンハイマー』はですね、アカデミー賞で作品賞、監督賞他、もう独占しましたけれども。去年の7月に全世界で公開されて、日本だけ公開がやっと今週になりました。どうしてそうなったか?っていうと、このオッペンハイマーという人は原爆を開発した男だからです。で、7月は8月の原爆投下の日に近かったので、公開が非常に難しかったんですけども。その後も、日本で映画を実際に見ていない人たちや、見たんだけど内容を理解していない人たちによるネガティブな批評が飛び交ってですね、公開できない状態になってきました。でもやっと、アカデ
原子爆弾の開発を指揮したアメリカの物理学者の葛藤と苦悩を描き、今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞など最多7部門を受賞した映画『オッペンハイマー』(3月29日公開)の試写会が12日夜、79年前にその原爆が投下された広島の地で開かれた。宣伝担当者によると、この日の試写会が、報道や関係者以外対象としては全国初という。特別に招待された地元の高校生や大学生ら計約110人が鑑賞。アメリカ出身で広島在住の詩人・絵本作家のアーサー・ビナードさん、元広島市長の平岡敬さん、呉市出身の映画監督・作家の森達也さんの3人が、上映後のティーチインに登壇し、それぞれの感想と思いを語った。 上映後に登壇した(左から)平岡敬さん、アーサー・ビナードさん、森達也さん=2024年3月12日、広島市中区、宮崎園子撮影 「私は広島の立場から、核兵器の恐ろしさが十分に描かれていないと思った。オッペンハイマーの人生、非常に複雑な彼の性
今月11日、第96回アカデミー賞で作品賞や監督賞はじめ、最多7部門の受賞を果たした『オッペンハイマー』。 第二次世界大戦下で原子爆弾の開発を指揮したオッペンハイマーの生涯を描いた作品だ。クローズアップ現代では、世界的なヒットを生み出し続ける“ハリウッドの鬼才”クリスファー・ノーラン監督への単独インタビューを2年余りの交渉の末に実現した。 なぜ今、世界の姿を一変させた科学者に焦点を当てたのか。作品に込めた核兵器の脅威とは。 今月29日の日本公開(配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画)を前に、桑子真帆キャスターによるインタビューが実現。その全文を公開する。 (聞き手 桑子真帆キャスター) 監督初の試み 歴史上の人物オッペンハイマーを描いた理由 映画『オッペンハイマー』は、去年7月にアメリカで公開され、世界興収は10億ドルに迫るなど、実在の人物を描いた伝記映画として歴代1位を記録している。
町山智浩さんが2023年12月26日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『窓ぎわのトットちゃん』について話していました。 (石山蓮華)そして町山さん、今日は? (町山智浩)今日はね、公開してから結構経っちゃったんですけど。僕、この間、初めて見たんで。『窓ぎわのトットちゃん』というアニメ映画をご紹介したいんですけどね。で、この『窓ぎわのトットちゃん』っていう原作はご存知ですか? (石山蓮華)知ってます。黒柳徹子さんの。 (でか美ちゃん)私、読んだことないけど。実家には母がたぶん好きで、置いてはありましたね。読んでおけばよかったって思うけど。 (石山蓮華)私も学級文庫にあったのに、読んでなかったです。 (町山智浩)あったでしょう? 誰の家にもあったと思いますよ。っていうのは、この『窓ぎわのトットちゃん』って全世界で史上最も売れた自伝なんですよ。 (石山蓮華)そうだったんですね! (町山智浩
「上映中はお静かに」どこの映画館でも、上映前に注意のショートムービーが流れる。もちろん大切なことだ。意外にマナーが悪いのが映画祭上映での評論家や記者などの業界人で、自分は特別と言わんばかりに上映途中でドカドカと入って来てはスマホで連絡をチェックし、仲間に挨拶し、もう分かったと言わんばかりにまた途中で出て行ったりする。言うまでもなく、そういうのは良くない。 でも映画『窓ぎわのトットちゃん』を劇場で見ている時、もし上映中にあなたのまわりで子どもが席を動いたり、映画の最中に声を上げてしまうタイプの子どもがいたとしたら、この映画にかぎってはそれを迷惑だとか、マナー違反だとか、静かにできない子どもを連れてくるべきじゃないとか思う気持ちをおさえてもらうことはできないだろうか。 筆者がこの映画を鑑賞した川崎の映画館でもそういう子どもが何度か上映中に声を発していたが、それをとがめる観客はいなかったし、筆者
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