なぜか二度も三度も四度も観てしまうことになる映画と、一度観て良い印象を持っても観る機会がほとんどない映画とがあって、「アパートの鍵貸します」は後者に属する。 確か最初に観たのが高校生くらいの頃で、深夜に吹き替え版をテレビでやっていた(ジャック・レモンを愛川欣也がやっていて、シャーリー・マクレーンの方は小原乃梨子という組み合わせ)。人類が滅亡するでもなく、人が死ぬわけでもなく、ガスタンクが爆発したり飛行機から飛び降りたりする場面のない地味な映画なので、いくら小道具の使い方や伏線の張り方が見事でも、若者の自分としては「これより上手く仕組まれている映画は他にも沢山あるんだろうな」といった感想しか持てなかった覚えがある。 その後、本作は揺るぎないコメディ映画の名作として「お熱いのがお好き」と並べて称揚されるビリー・ワイルダーの映画、という位置に納まって、そのまま数十年が過ぎてしまった。 たまたま家