性に関する議論は、真面目にやろうとしてもさまざまな困難に直面しやすい。 「いやらしい」と生理的な反発を買うこともある。本来の主旨からはずれて「いやらしい話をしたいのかな」と誤解をされることもある。キワモノ扱いされるのも珍しくない。 さらには「あなたの立場はどうなのだ」と政治的なスタンスを問われ、うかつに答えると糾弾されるリスクもある。 日本史の研究者、高木まどか氏(東京都公文書館専門員)もこうした問題に常に向き合っている一人だ。高木氏の研究テーマの一つは、江戸時代の吉原遊廓。当然、文献資料の研究がメインとなるのだが、テーマならではの苦労があるようだ。 「あなたはこういう制度を許容、肯定するのか」 ある種の人達は、現在の価値観で過去を裁こうとする。そして時に研究者に対しても何らかの潔癖性を求めるのだ。これは対象が「戦前の日本」の場合でも見られることだろう。 こうした問いに研究者はどう向き合い