福田和子はわたしのいちばん好きな犯罪者だ。いささか不謹慎な物言いだが、そうなのだから仕方がない。彼女ほどチャーミングな殺人犯はいないと思う。わたしに限らず、この有名な整形逃亡犯に魅了された人は多い。いろいろな作家がその魔性について記している。「福田和子はなぜ男を魅了するのかー『松山ホステス殺人事件』全軌跡(松田美智子著)」「逃げる福田和子―極限生活15年の全真相(大庭 嘉文)」「悪女の涙―福田和子の逃亡十五年(佐木隆三)」「魔性・整形逃亡5459日 福田和子事件(大下英治著)」また「kamome/カモメ(監督・中村幻児/主演・清水ひとみ)」や「顔(監督・阪本順治/主演・藤山直美)」など、彼女、もしくはそれらしき人物をモデルにして作られた映像作品もひとつではない。しかし、他のどれでもなく「涙の谷」を読み、わたしは彼女の魔性を確信した。和子自身によって綴られた半生と逃亡の記だ。正直、他の関連書