Executive Summary フエンテス『聖域』(国書刊行会) は、メキシコの大作家フエンテスの習作。神話的な物語を現代に重ねて、大女優の母親にエディプス的に焦がれる自分を書いたものだが、最終的にその焦がれる対象が自分になるで、すべてがナルシズムでしかないことを露骨に示し、都合の悪いところは神話妄想でごまかすという、後のフエンテスのダメなところすべてが露呈している。 聖域 (1978年) (ラテンアメリカ文学叢書〈8〉) 作者:木村 栄一,C・フエンテスAmazon 最近出た「空気澄みわたる地」あとがきで「意味不明」と言われていたので、ずっと積ん読(冒頭の、ユリシーズは実はセイレーンの歌を聴いていなかった説まで読んだ)だったのを引っ張り出して読んでみた。 確かに意味不明と言われても仕方ない。が、自慢だけど、ぼくは結構、この小説の「意味」はわかるのだ。 が、『聖域』は意味がわかるとなお