来年は、いよいよ戦後70年である。 これは筆者のように、ヴェトナム戦争終結の年=1975年生まれが、40代に入る年でもある。戦争そのものへのリアリズムが希薄化していくことは、当然のことと言えば当然であろう。これは言いかえれば、戦争の忘却=アメリカと日本の良好な関係は「自明」だ、と思いこむことである。日米のあいだの亀裂自体を、忘れてしまうということだ。 ところが震災以降、わたしの興味は坂口安吾や吉本隆明、そして三島由紀夫などを読み直すことにむかった。なぜなら震災と戦争には、非常事態=「例外状態」という共通点があったからだ。例外状態とは、ドイツの法哲学者カール・シュミット、そうあのヒトラーの理論的参謀がもちいたことばである。 震災や戦争は、日常生活が崩壊し、生々しい現実が露出する。 普通では考えられない例外的な出来事が、逆に常態となる。 そういう場所に居合わせ、その現実を凝視した人間の物の見方