(第66号、通巻86号) 「君子は豹変す」と言えば、どんなことを思い浮かべるだろうか。プラス的なイメージとマイナス的イメージとの二者択一なら、大半の人がマイナス的イメージの方を選ぶのではあるまいか。 「君子」は、「聖人君子」という熟語があるように「学識、人格共に優れた徳の高い人」という意味だ。現代風に分かりやすく言い換えれば、社会的な地位が高く教養豊かな紳士、といったところか。また、「豹変」は、「性行や態度、意見などががらりと変わること」。そういう二つの語から成り立つ「君子豹変」は、立派な人が機をみて態度や考えを安易に変える、あるいは、突然、本性を現して恐ろしい人物に一変する、という否定的な意味で使われることが多い。 しかし、各種の辞書類にあたってみると、上述の用法は本来の意味とはどうも違う《注》。例えば『明鏡ことわざ成句使い方辞典』(大修館書店)の説明はこんな具合だ。「君子豹変す、という