アメリカで五〇万部、日本でも発売から約二か月で一三万部売れたという。NHKではピケティの連続講義「パリ白熱教室」が放送され、朝日新聞ではピケティによるコラムの連載が始まった。各種雑誌でも「ピケティ特集」が組まれ、週刊誌『東洋経済』はすでに三度もあやかっている。経済の専門書でこれだけ話題になった本と言えば、ミルトン・フリードマンが妻のローズとともに書いた『選択の自由』(一九八〇年)以来ではないだろうか。約三五年ぶりのベストセラーの誕生である。そこに私たちは何を読み、何を得るべきなのだろうか。 二〇世紀の歴史をざっくり振り返ってみると、経済学の名著はそれぞれの時代にあらたなビジョンを与えてきた。 ケインズ『一般理論』(一九三六年)やポランニーの『大転換』(一九四四年)は、大恐慌(一九二九年)後の世界への対応として、ハイエク『隷従への道』(一九四四年)は全体主義・社会主義への対応として、それぞれ