1982年、85年、86年と昭和のプロ野球の世界で3度の三冠王を獲得し、監督としてもリーグ優勝4回と日本一1回を成し遂げた落合博満はアスリートの肉体についてこう語っている。 「殊にスポーツ選手にとって大切なのは『体技心』の順になると考えてきた。要するに、食べることも仕事なのである」(落合博満『戦士の食卓』岩波書店、2021年) 1996年、当時の将棋の全タイトル七冠を手にし、平成の間にタイトルを計99期保持した羽生善治は棋士の肉体についてこう語っている。 「長時間の対局で消耗し疲労する棋士とアスリートとの共通点はあると思ってます。肉体的な要素は16歳で初めて(持ち時間各6時間の)順位戦を夜中まで指した時から感じてきましたから」(『Number』2021年1月7日発売号) 極度の集中状態で長時間の思考に沈み込み、最善手への探求を続ける棋士という職業。数々のタイトルを手にしてきた2人の言葉にあ