それは二〇二四年の出版界における一つの事件であった。あるいは、その後の「令和人文主義」を巡る議論を思えば、ある種の地殻変動の予兆であったのかもしれない。三宅香帆氏による『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が三十万部を超えるベストセラーとなり、多くの読者がそのタイトルに自らの姿を重ね合わせ、切実な共感の声を上げたことである。 そこでは、かつて学生時代には貪るように本を読んでいた人間が、社会に出て「全身全霊」を求められる労働環境に身を置いた途端、読書という行為から疎外されていくという喪失がもたらす痛感が語られた。しかもそれは個人に由来する要因、例えば、怠惰のようなものではなく、日本の近代化と労働倫理の構造的な病理として描き出された。ゆえに同書は、現代の若年層の心に巣食う「文化的欠乏感」を見事に「言語化」したとして受容され、「消費」された。 この受容的消費に対し、データをもって異議を唱えたの
「ポスト石破レース」の号砲が鳴った。初の女性総理であれ、最年少首相であれ、次のリーダーが避けられないものが、デジタル時代のポピュリズムである。7月の参議院選挙では右派ポピュリズム政党の参政党が大躍進したが、その原動力はSNSや動画を駆使したデジタル戦略だ。テクノロジー時代に、民主主義はどこへ向かうのか。 【画像】WebX2025の会場でインタビューに応えるオードリー・タン氏 「文藝春秋PLUS」に掲載された、オードリー・タン氏(台湾の初代デジタル発展大臣)の インタビュー 冒頭を紹介します。(聞き手:ジャーナリスト 杉本りうこ) ◆◆◆ ――日本では今夏、SNSを巧みに使った右派ポピュリズム政党が躍進しました。ネット空間は民主主義を不安定にしているのでしょうか。 オードリー 参院選の投開票が行われた直後、私はちょうどイベント登壇のために日本にいました。旧知の安野貴博さんの政党(チームみらい
2014年4月1日、理化学研究所の野依良治理事長(当時)が「理研の研究者が科学社会の信頼性を損なう事態を引き起こした」と謝罪した。REUTERS/Yuya Shino <2014年の「ネイチャー」誌掲載の2年前にES細胞混入の可能性を指摘されていた「STAP細胞」論文。科学報道を通じて、記者が突き付けられたこととは? 『アステイオン』102号の論考「実践から考える科学ジャーナリズム」より一部抜粋・転載> 科学ジャーナリズムとは何だろうか。私はかつて科学記者を志して新聞社に入社したが、当時抱いていたのは次のようなごくシンプルなイメージだった。 1つは、最新の研究成果や科学の潮流をかみ砕いて一般読者に伝えること、もう1つは、科学・技術が絡む重大事件──以下、学生時代に読んだ新書(柴田鉄治『科学事件』岩波書店、2000年刊)に倣って「科学事件」と呼ぶ──を一定の専門性をもって取材し、報じることだ
楢原真樹(写真左) それこそ去年はM-1頑張りたいからって、僕が全国ツアーちょっと待ってくれって言ってたんですよ(笑)。 ――そうだったんですね。 楢原 ツアーは初めてだったので、やるならちゃんとやりたい。M-1用のツアーじゃなくて、単独ライブじゃなくて、もっといろいろ遊びがあるような。勝負ネタいっぱいかけますよとかじゃないもの、長いネタもあってもいいしみたいな。それがやりたかったので「来年チャンピオンになってからやりましょう!」って言ったら、チャンピオンになれなかったんですけど(笑)。 このぐらい肩の力抜いてる方がM-1でいい結果出るかも ――でも悲願ですね。 楢原 このぐらい肩の力抜いてる方がM-1でいい結果出るかもしれない。その結果2回戦敗退っていう可能性もありますけど(笑)。 出井 M-1用のネタも全然やっていいし、自由ですかね、全国ツアーって。最近思うんですけど、M-1目指すこと
異例のスピード解散を経て始まった衆院選もいよいよ10月27日の投開票を迎えます。一票を投じるにあたり、大事にしたいことは何か、さまざまな社会課題と向き合う立場から考えます。 イギリスで政治学を学んだ経験から、選挙や政治について「個が生き延びるための行為であり、国民主権の問題」と語る、英文学者の小川公代さん。政治への関心が高まらない現状をジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』に重ねつつ、「ケアの倫理」をヒントに考える、選挙への向き合い方とは。 10・27を話そう⑧ 英文学者の小川公代さん ――選挙への向き合い方で大事にしていることはありますか。 私は「どちらがいいか」という二元論に回収されない「ケアの倫理」をずっと論じてきて、そのなかで「ネガティブ・ケイパビリティ」(不確かさや疑いのなかにいられる能力)、つまり悩み続けることを諦めないことを考えてきているんですが、選挙についても同じことが言
最高裁長官となり、司法の独立と中立維持のために強権的なやり方を強めていく桂場等一郎。第1週から登場し、時に嫌味を言い、時に背中を押し、寅とも子こ(伊藤沙莉)の成長を見守ってきた彼の心の内とは──。 演じる松山ケンイチさんに、桂場の生き方について、また芝居の中で感じたことなどについて聞きました。 鼻血のせいで、桂場は航一に“刀を振り下ろす”ことができなかった ──最高裁長官となった桂場は、「司法の独立」にこだわるあまり、独裁的な人事を行うなどして、孤独を深めています。そんな桂場の心境をどのように感じていますか? 桂場にとって“正しい司法のあり方”とは、まず中立であり、1ミリも傾いておらず、汚れてもいないものなんです。まっすぐな視点で物事を判断することに、ものすごく執着している、潔癖というか、神経質な男ですから。 それが最高裁長官となって、裁判所全体の問題をジャッジしていかなくてはならない中で
歴史学者として、日本学術会議の任命拒否問題の当事者として、そして女性として、静かに周りを見つめている。日々の出来事をメモに書き付け、読み返し、歴史に位置づけ直す。傷ついたことも理不尽な経験も。加藤陽子さん、周到に、しなやかに闘うその目線の先に何があるのですか? 悪い制度に出会ったら ――研究室の名札は「野島陽子」なんですね。 「現在の戸籍名です。論文執筆時などに研究者名『加藤陽子』が確保できていれば、他はこだわらず『野島(加藤)陽子』なども使っています。もちろん選択的夫婦別姓論者です」 「1996年に夫婦別姓を選べる法改正案を法制審議会が答申しても、与党内の多数ではない『不自然な少数』の反対で法案化できずにきた。明治憲法の実質的起草者・井上毅(こわし)が女帝を認めなかった理由は、なんと、姓が変わるからでした。姓が変わる、すなわち『易姓』とは中国における王朝の交代を意味します。『姓が変わった
「若い女性の定着が重要」「若い女性の定着回帰を目指す」—。人口減少への対策としてこのような言葉を見聞きするたび、違う、そうじゃない、と強く思ってきました。6月5日、厚生労働省が2023年の人口動態統計を発表し、秋田県は出生数が「ワースト」ということで大きなニュースになっていました。東京都の合計特殊出生率は過去最低の「0.99」とのこと。 データは、分かりました。 自分がずっと、もやもやと苦しく感じてきたのは、人口減の原因としてこれでもか、これでもかと「女性」に焦点が当てられ続けていることです。 疑いもなく「若い女性」に焦点をあてる 「女性の社会進出」が少子化の原因だと分析され、ふと気づいたら一転「女性活躍」と言われるようになり、その舌の根も乾かぬうちに、今度は「若い女性」をターゲットに少子化対策。露骨なまでに「いかに産ませるか」が論じられ、税金が投入されている。 私の住む秋田県でも「若い女
交流サイト(SNS)の浸透を背景に、戦争は、人々の考え方の主体となる「脳」を巡る争い「認知戦」に発展しつつある。「人の脳が戦場になる」とは、どういうことなのか。ロシア・旧ソ連諸国を専門とする軍事研究家で、安全保障問題に詳しい小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター准教授(42)に聞いた。(聞き手・滝沢学) 認知戦 人の脳など「認知領域」を標的にした戦い。世論の誘導や敵対勢力の撹乱を狙う「情報戦」の一つ。マスメディアを通じたプロパガンダ(宣伝)の流布だけでなく、SNSなどで刺激的な情報発信を繰り返し、人の頭の中に直接働きかけて考え方を先鋭化させ、対立をあおって社会を弱体化させる。陸海空や宇宙、サイバー空間と並ぶ6番目の戦闘領域として「認知領域」が捉えられ、各国で研究が進む。日本では2022年の防衛白書で初めて「認知戦」の用語が登場した。
私たち東大生の声を聴いて! 「私の家庭は裕福ではない。 仕送りだけでは学費と生活費が賄えないため、貸与型奨学金という名の借金を背負っている」 「学費が10万円も上がれば、親に『大学院に行って研究をしたい』などとは口が裂けても言えず、夢への第一歩すら踏み出せない」 「大学から遠いボロボロの寮に不便を感じながら住まざるを得ず、食費を削っている」 5月15日、東京大学が学費値上げを検討していることが判明。 学生を無視して学費値上げを進めようとする動きに対し、教養学部学生自治会のアンケート(回答者数 2,297 名)では、なんと9 割を超える学生が反対! 多くの学生が連日抗議し、6月6日には東京大学文学部連絡会主催「学費値上げに反対する全学緊急集会」で、東大学費値上げ反対の決議文が議決。 東京大学の学費値上げ報道に呼応して広島大学や熊本大学でも値上げの検討が示され、私立大学の平均年間授業料が100
「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の控訴について」に対する反駁 2024年3月5日 吉田寮自治会 2024年2月16日、「吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟」の第一審判決が言い渡されました。判決文は、吉田寮自治会側の主張をおおむね認めたものでしたが、控訴をしないこと、及び話し合いを再開することを求める吉田寮自治会側の主張にもかかわらず、京都大学は2月29日に控訴しました。翌3月1日、京都大学は公式サイトに、声明「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の控訴について」を掲載しました。この声明には、吉田寮自治会として認め難い箇所や、誤解を招くような文言が随所にみられます。そのため、以下に声明の全文を引用しながら、反駁をくわえます。 吉田寮自治会は、京都大学が訴訟を取り下げ、話し合いを再開することを、あらためて強く求めます。 ※以下、引用傍線付部分が京都大学声明からの引用(下線は吉田寮自治会が付した) 吉田寮現棟に
■記者解説 編集委員・北野隆一 日本学術会議の会員への任命を拒否された学者6人が、国を相手取り東京地裁に提訴した。経緯に関する行政文書の不開示は違法だとして、開示するよう求めている。支援する法律家らも…
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