悪い評判を一切聞かない珍しい映画。所詮勧善懲悪のアクション映画だろ?と斜に構えて見に行ったんだけれども、予想を上回る傑作だった。メメントの監督だし外れることはないだろうとは思ってはいたけど、脚本・演出ともにここまで作り込まれているとは! 個人的に注目したのは全体の構造におけるジョーカーの役割。ジョーカー=道化論をふまえた作りになっていて、山口昌男監修かと思ったほどだ。自分も一時期はまっていて「道化の民俗学」やら「道化と笏杖」やらを読みあさっていたことがあった。 このジョーカーという存在が、一見、単純な善悪の対立構造に見えなくもないストーリーに深い味わいを与えている。わかりやすくするために、レヴィ=ストロースっぽい感じで構造を図にしてみよう。 ゴッサムシティーでの基本的対立は、警察と悪党による単純な善悪の対立だ。警察は法でもって正々堂々と悪党を裁こうとする。悪党にもまた悪党のルールがあり、き