『サド侯爵の呪い 伝説の手稿『ソドムの百二十日』がたどった数奇な運命』は、手稿の受難、サド自身の波乱の生涯、投機詐欺という3本の糸がからみあうミステリー小説のようなノンフィクションだ。 さまざまなエピソードが盛り込まれており、翻訳中は調べものが多かった。ただおかげで、翻訳書には入りきらない興味深い話がたくさんみつかった。今回、それらをご紹介いただく機会をいただいたので、全3回でお届けしたいと思う。 第1回は、サドを取り巻く女性たちについてお話しさせてください。この本には、貴族の出であるサドの妻や義母から娼婦まで、さまざまな立場の女性が登場する。 まず注目したいのは、サドの妻ルネ=ペラジの母マリー=マドレーヌ・ド・モントルイユ。モントルイユ家でおとなしい夫を差し置いて決定権を持ち、「閣下(プレジデント)」の呼び名で知られていた女性だ。 1768年にサドがアルクイユ事件(物乞いの女性を暴行した
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