〈 CORRESPONDANCES(フランス語、コレスポンダンス)〉などと言うと、 「文通」のことかと思われる方が多いのではないだろうか。確かに、そ れで間違いはないのだが、私がこれからお話ししようとしている〈コレ スポンダンス〉とは、色彩と音響と香気との間の呼応のことなのである。 さよう、〈コレスポンダンス〉には「照応、呼応、調和」の意味もある のだ。 ここで、察しのよい方は、シャルル・ボードレール(1821〜67)やア ルチュール・ランボー(1854〜91)の詩を思い浮かべるにちがいない。 ボードレールは、詩集『悪の華』の中で次のようにうたっている。 《夜のごと、光のごとく、底ひなき、/暗くも深き冥合の奥所なる、 /聲長き遠つ木魂の、とけ合ふとさながらに、/匂ひと、色と、もの の音と、相呼び合ふよ》(堀口大學訳)。 しかし、これだけでは何のことやら一向にわからぬ