【書評】『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』鈴木涼美/青土社/ 1995円 【評者】井上章一(国際日本文化研究センター教授)】 どうして自分はAV女優になったのか。そんな自分語りを、女優たちはしばしばくりひろげる。雑誌のインタビューのみならず、AVの画面でも。 それぞれ、なかなか聞きごたえもある。おもしろい語りになっている。だが、その表面的なあざやかさやわかりやすさをうのみにしては、いけない。彼女たちは、日常的に自分語りを要請されている。 仕事をもらうためには、業界内でのさまざまな面接をへなければならない。彼女らの語りは、たびかさなる面接をへて、みがきあげられていく。「お兄ちゃん」に犯された過去などは、いともたやすくつくられてしまうのだ。 こうした語りは、また彼女たち自身を納得させる効用も、もっている。ほんとうのところは、どうしてこの道にはいったのかがわか