無臭の天然素材「塩」の香水をつくりたい。それが、2022年に亡くなった三宅一生が生前に残した最後の願いだった。そして2024年9月、その奇跡の香り「ル セルドゥ イッセイ」がお披露目された。ボトルデザインを担当した吉岡徳仁に、スペイン「エル・パイス」紙が話を聞いた。 現代デザイン界有数の鬼才、三宅一生は死ぬ前に明確な指示を残した──彼のこの世で最後のレガシーは、塩の香りを明らかにすることになるだろう、というものだ。 塩、すなわち化学用語で「塩化ナトリウム」と定義されるこの物質は、自然によって強烈な味を授けられたが、それと引き換えに、香りはぼんやりしていて捉えどころがない。 西欧文化の信仰とは反対に、日本ではテーブルにこぼれた少量の塩は吉兆とされる。また、塩は悪霊を除く助けになるともいわれている。三宅はこのエレメントのために、香りをつくりだすことにした。 これに似た挑戦は、遡ること30年前、