都会に住む男が8000メートル級の冬山の究極の環境に放り込まれたら……。こんなユニークな“妄想”から、今シーズンのヨシオクボのクリエーションは始まった。 文:増田海治郎 といっても、極地用のダウンのオンパレードというわけではない。あくまで都会で暮らす男がいきなり不時着してしまった設定なので、ベースの服は非常に都会的だ。 ストライプや花崗岩のような柄のスーツの上に、幾重にも重ねたナイロンのオーガンジーのパーカーは、山の上に捨ててあったテントや山道具を無造作に身にまとったイメージ。「これでは寒さを凌げないじゃないか!」と突っ込みたくなるが、極限の環境におかれたら案外そんなものなのかもしれない。縫製が非常に難しい素材なので、「こんなこともできるんだというのを、こっちの人たちに見せたかったのもある」と久保は説明する。