私たちが生きているこの世界は、一方では強烈な国家主義と国民主義によって囲われている。アメリカ合衆国が自国第一主義をかかげる大統領をいだき、ヨーロッパ諸国、そして日本でも、それに同調し自国第一主義をあからさまに主張する政治家たちや言論人たちや市民が目立って増えてきている。国家の正規メンバーとされる「国民」だけが権利を享受すべきであるというわけだ。 他方でこの世界には、移民や難民が溢れている。すなわち、よりよい労働条件を求めて動く移民と、戦争や災害によって故郷に暮らすことができなくなった難民とに関するニュースは絶えることがない。そして、移民と難民とに区分することのむずかしい移住者も多岐にわたる。植民地支配に由来するいわゆるオールドカマー、過疎を背景とした国際結婚ビジネス、研修や実習やさらに留学を名目とした事実上の労働移住、そして密航や不法入国や非正規滞在。 今後の連載のなかで具体的に見ていくこ