鰹節ならぬ鴨節(かもぶし)というものをご存知だろうか。漆黒の塊にうっすらかびが付いた様は、まるで鰹節。香りをかげばかぐわしく、鰹節削り器で、ごく薄く削れるほどに硬い。実はこれ、昨年6月、銀座にオープンした、今をときめくフレンチレストラン「エスキス」のシェフ、リオネル・ベカ氏が、今までにないフランス料理の「うま味=umami」を求めて、試行錯誤のうえ、完成させたものだ。果たしてその味は? 日本人なら日常的に食品や料理の中に感じる「うま味」。これは、甘・塩・酸・辛・苦に次ぐ、第六の味として、日本では長く親しまれてきたが、うま味成分として、科学的に認知されたのは100余年前のこと。1908年に昆布からアミノ酸を、1913年には鰹節からイノシン酸を取り出すことに成功した。 しかし欧米では、1990年代まで、うま味は味の一つとして認識されていなかった。2000年になり、舌の上にうま味を感じる受容体が