広大な地域が未曾有の大震災に見舞われた上に、政府は機能不全で原子力発電所の放射能漏れを止められない。そんな国の通貨の信認は失われ、暴落してもおかしくない。ところが、円高基調は止まらない。なぜか。 答えは簡単。日本は世界に比類のない債権国だからだ。震災復旧・復興費捻出や保険金支払いのためにドル資産を売却すれば、巨額の円買い、ドル売りが起きると米欧の投資家が予想するのだ。日本の海外資産が本国に逆流すれば、ドルの暴落のきっかけになりうるので、米政府や米連邦準備制度理事会(FRB)だって困る。 データを見よう。 日本の対外純債権は官民合わせて250兆円(2010年末財務省推計)に上る世界最大の債権国である。このうち、政府は米国債を中心に約90兆円の外貨準備を保有しているが、米国債はニューヨーク連銀が保管しおり、日本政府は相手の了解がない限り売却できない。もとより米国債保有は日米同盟と切り離せない。