若者が目を覚ました場所はスラムの裏路地だった。 彼はこの風景に見覚えがなかった。それどころか自分の名前さえ知らなかった。 しかし一つだけ確かな知識があった。 (私の記憶は世界中を歩き回ることで戻るだろう) 若者は労働と物乞いを繰り返し、世界中を歩き回った。 その旅は決して楽なものではなかった。彼の身なりや容姿のみすぼらしさ もあり、人々は彼を冷たい目で見た。 野宿して起きてみれば、荷物がなくなる。汗水を流して稼いだ金で、少し いい宿に泊まると、ナイフを持った男に脅されてあり金を全て奪われる。 こんなことが日常茶飯事だった。 「儲け話があるから」と言われてついて行けば詐欺にあった。一晩愛を暖 めた女は、財布とともに消えてしまった。世界は彼にとって冷た過ぎた。 ある時などは、チンピラ集団に絡まれて、川に流され死にそうになった。 それでも若者は歩き続けた。 5年の後、