平成24年版厚生労働白書は、社会保障の教科書的内容になっているが、(最近の)経済学の知見が反映されていないと感想がある。それに対して、ケインズ、ポランニー、アダム・スミス、セン、フリードマンなどの大御所経済学者の名前が散見されるのに、反映されていない「経済学の知見」とは何かと言う疑問があがっている(EU労働法政策雑記帳の後半部分)。 確かに大御所の名前はあるのだが、恐らく意識的に、理論モデルや実証研究の知見が紹介されていない。つまり社会保障の必要性を訴える一方で、社会保障の適正水準を巡る議論は極力排除している。厚生労働白書で経済学の知見をどこまで紹介すべきかは議論があると思うが、陰謀論的に分析してみよう。 1. 効率と公正の細部に踏み込まない 第2章で社会保障の理念や哲学を紹介していて、効率と公正と言う評価基準を紹介している。しかし、なぜ効率が改善するのか、なぜ公正になるのかの議論が薄い。