理系オンチを自認する私がなぜ生態数理学という、いかにも難しそうな学問を研究している人の本を手に取ったのか。それは、以前この著者を『爆笑問題のニッポンの教養』というテレビ番組で見て、強く印象に残っていたからだ。放映は2007年の11月だから、もう2年以上も前の話だ。 番組で、著者は研究対象の「素数ゼミ」について身ぶり手ぶりを交え、熱く前のめりに語っていた。太田光に「子供みたい」と突っ込まれていたが、まさに遊びに熱中している少年のような無邪気さをふりまいていた。 素数ゼミ(正式には周期ゼミ)とは北米にのみ生息するセミで、土の中で13年もしくは17年もの長い年月を過ごし、成虫になる。定期的に何十億匹というセミが大量発生し、周囲を騒音の渦に巻き込む。その謎を「素数」をキーに世界で初めて解いたのが著者である。 素数セミの祖先はもともと、毎年発生するごくありきたりのセミだった。だが、新生代の氷河期に入