グリーンスパンの話といえば、曖昧で退屈なことで知られていた。もちろん、それはFRB議長という立場上しょうがないのだが、妻にプロポーズしたときも3回目でようやく意味が通じたというのは、有名なジョークだ(本書では「実は、あれは5回目だった」と明かしている)。そういう著者の回顧録がおもしろい本になることは期待できないが、本書では意外に率直に政権の裏側を明かしている。 本書は2つの部分にわかれており、邦訳の上下巻にそれぞれ対応している。上巻では若いころプロの楽団でサックスを吹いていた話や、エコノミストになってからはアイン・ランドとの交友関係から強い影響を受け、リバタリアンになったことなどが書かれている(リバタリアニズムを「自由意思論」と訳すのはおかしい)。もちろん重要なのは、FRB議長になってからの話だが、前任者ボルカーの路線を継承するというのが基本路線だったようで、あまり独自の方針は示していな