第一回では、学名というものが分類学の道具であるということをすでに述べてきた。 分類学における道具とはいったいどういう意味か?それはまだ説明していない。 それには分類学という学問が何をするものかを理解しないといけない。 その理解のためにはタクソン(複数形はタクサ)という用語の理解が不可欠である。 タクソンという言葉は、長年、虫に興味をもって何らかのかかわりをもっていると、学名と同じようにどこかで耳にする言葉である。 日本語でいうならば、分類学的単位ということになる。 なんのことかよくわからないだろうから、もう少し説明的にいうと、 タクサとは、互いに系統類縁関係をもつと推定される単位で、他の単位から識別できる形質を共有する複数の生物で構成された1つの個体群(生物ユニット)、あるいは個体群の集合 を意味している。 はるかかなたの大昔に、それはおそらく巨大な有機合成の実験室であった原始スープの海が