「2人を引き離すには殺すしかないと思った」。同志社女子大職員の荒川孝二さん=当時(36)=を刺殺したとして、殺人などの罪に問われた文部省出身で同女大の元教育・研究推進センター次長、天野祐一被告(59)=控訴中=は、ぼそぼそと供述した。常にうつむき加減の初老を迎えたやせた男。法廷での姿からは、ストーカー行為を繰り返した末、探偵まで雇って元交際相手の行動を調べ、仲裁に入った男性をメッタ刺しにした執着心はうかがえない。しかし、整っているようでどこか奇妙な供述は、うたかたのダブル不倫に溺れた1人の中年男の歪んだ嫉妬心と殺意を浮き彫りにした。探偵からの報告に… 「もう恋愛感情はありません」 検察側の冒頭陳述や、証人として出廷した天野被告の元交際相手の証言によると、天野被告が、当時同僚だった女性から、別れ話を切り出されたのは平成23年3月だった。 2人は、互いに家庭を持ちながら、20年ごろから交際して