困敵之勢、不以戦、損剛益柔。 敵の勢いを衰えさせ枯れさせるには、戦闘そのものではなく、損剛益柔によるのである。 ※損剛益柔(剛を減らし柔を増す)は山澤損の象の作用を指す。(易経) 我が動かないときに敵が動かねばならぬように仕向け、我が少し動くときに敵は大きく動かねばならぬように仕向け、我が主導権を握り敵を振り回すようにして敵の兵員の疲弊と物資の浪費を誘う。奇襲急襲が功を奏するときもあるが、すぐに戦闘そのものに入らず、我が方の軍の動きで敵を撹乱して、あらかじめ敵の勢いを削ぎ、我が攻めやすいような弱点を生じさせることを心がけるべきである。 中国の劉秀(後の後漢の光武帝)は新朝の皇帝と成った王莽によって簒奪された漢王朝を復興しようと兵を挙げたが、戦乱により大陸全土は荒れ果て、大軍を維持・運用する為の補給線を確立するのは困難であった。 そこで劉秀は軍団の規律を厳しくし、少数精鋭の兵力を引き連れて敵