東大寺(奈良市)の1261回目の修二会(お水取り)は、15日で満行となった。春分も過ぎ、春の女神・佐保姫が温かくもてなしてくれる日も近い。 *** 古代中国の学説である五行説では、春は東、平城宮から見ると佐保山の方角からやってくる。山野が色とりどりに染められ、薄い衣で透かしたように霞む景色。染色と織物が上手な佐保姫は、うっとりするほど美しい女神なのだろうなと想像する。 以前訪ねた神社に、元は佐保姫が祀られていたはず…と思い立ち、西包永(にしかねなが)町にやってきた。東大寺転害門から、一条通りを西に進む。普段は格子で閉ざされている静かな社「佐保川天満宮」に到着した。 由緒書きを見ると、奈良朝の時代、雷神(天の神)を多門山の守り神として祀ったのが始まりとのこと。戦国武将、松永久秀が多門城を築く際に、同地に祀られていた「佐保姫明神」と一緒に現在の場所に遷宮されたそうだ。佐保姫明神は、さらに他の地