イチローの野球が今年もはじまる。「イチロー劇場の開幕」とか「イチロー・ショーのスタート」とかいった言葉も頭に浮かばないではないが、大リーグ9年間でこれだけ安定した実績を重ねてきた彼には、劇場とかショーとかいった言葉があまり似合わない。 それでも、予告篇は21世紀版の「ザ・キャッチ」だった。いうまでもないが、20世紀版は1954年ワールドシリーズのウィリー・メイズだ。メイズは、ポロ・グラウンズのセンター最深部で、ヴィック・ワーツの大飛球をうしろ向きのままキャッチした。あの写真を知らない野球好きはいないだろう。 イチローはオープン戦で「ザ・キャッチ」を再現した。騒いだのは日本人だけではない。私が親しくしているアメリカの野球好きも、あの映像をユー・チューブで10回以上見たといっていた。「草野球の夢だね」とわれわれは笑い合った。私も子供のころ、夢見たことがある。ただし、うしろ向きのままの捕球などと