この記事の写真をすべて見る 「団塊の世代」の名付け親である堺屋太一氏が今年2月に逝去し、彼の遺した大作『平成三十年』が再び注目を集めている。 本書は約20年前に生まれた近未来小説で、作中では平成30年を生きる“未来人”の世界が仔細に描写されており、20年越しの「予言小説」として世に衝撃を与えている。 「当たった・外れた」といった観点からも楽しめるが、本書の白眉は、今の日本を漂う「時代の空気」を的確に捉えている点だ。副題の「何もしなかった日本」にあるように、改革を不得手とする日本型組織への警世の念も込められており、むしろ我々“未来人”に刺さる内容ともいえる。 今回は特別に本書から、2003年に堺屋太一氏が記した「文庫版あとがき」を公開する。 * * * 「平成三十年」と題する小説を、朝日新聞朝刊に連載したのは、1997年(平成9年)6月1日から翌98年(平成10年)7月26日までである。