脳は文法を知っている 脳には言語の文法判断に特化して働く中枢があるという。それを実験でつきとめた酒井邦嘉さんという研究者(東京大学助教授)を、仕事で取材させてもらった。酒井さんは、チョムスキーが唱えた「普遍文法」の発想に立脚し、人間の脳は言語の基盤を生まれつき備えていると明快に述べる。今回の取材を通してこのテーマをめぐる私の考えも少し固まってきた。そのあたりをまとめてみた。 ●言語がすぐにしっかり身につく謎 幼児は驚くほどスピーディーかつスムーズに言語を覚えていく。考えてみれば不思議ではないだろうか。言語という複雑な仕組みを、まだ知能の高まっていない段階で、しかもそれほど多くの正しい文例に触れるわけでもないのに、完全に身につけてしまうのだから。 やはり、言語を聞きわけ自らも話すための基盤を赤ちゃんは持って生まれてくると考えざるをえない。いや、だったら人間の能力なんてすべて生まれつきの身体が