鼻を近づけると、濃い自然の香りがする。 土、麦、畑に渡る風。そういう諸々が余計なものに邪魔をされず、ダイレクトに伝わってくる。 八重岳ベーカリーが全粒粉のパンを作り始めたのは1977年、今から35年も前のこと。 現在のように健康志向の食生活が注目されていたわけでもなく、「パン=白くてふわふわしているもの」という考え方が当たり前の時代。黒くて歯応えのある固めのパンなど、他ではほとんど見られなかった。 オーナーである比嘉恵美子さんの夫は医師。患者のために健康に良いパンをという思いが発端となり、パンづくりを始めた。 精米する前の玄米の栄養価が高いように、精製前の小麦である全粒粉には食物繊維、タンパク質、鉄分、ビタミン群、亜鉛、マグネシウムなどが豊富に含まれている。健康の回復を目指すひとだけでなく、健康維持にも効果的であることは言うまでも無い。比嘉さん夫妻はやがて患者だけでなく、より多くの人に届け