ソマティック・マーカー仮説とは、神経学者アントニオ・ダマシオ(1994, 2005)が主張する説で、外部からある情報を得ることで呼び起こされる身体的 感情(心臓がドキドキしたり、口が渇いたりする)が、前頭葉の腹内側部に影響を与えて「よい/わるい」という ふるいをかけて、意思決定を効率的にするのではないかという仮説。この仮説にしたがうと、理性的判断には感情 を排して取り組むべきだという従来の「常識」に反して、理性的判断に感情的要素はむしろ効率的に働くことにな る。 ダマシオ(2005:x-xi)の簡潔で要を得た説明によると「感情(=情緒=情動, emotion)は理性=知性あるいは理[ことわり](reason)のループの中にあり、一般に考えられているように感情は推論のプロセス (reasoning process)を有無を言わさず邪魔するというよりも、むしろ助けているかも知れない」という仮説