2019年に「京都アニメーション」のスタジオが放火され、社員36人が死亡した。この事件の裁判では、被告が殺人などの罪に問われていた。審理の結果、京都地裁が言い渡した判決は、死刑だった。 犯罪者にフォーカスする、それだけでいいのか?これで一件落着――そう思う人も多いだろう。しかし、実際のところ、問題は何も解決されていない。 今のままでは、同じような事件は必ず起きる。逮捕されてもいいと思って犯行に及ぶ「自爆テロ型犯罪」の発生間隔が短くなっているからだ。 こうした昨今の社会情勢を考えると、同種事件が再発する危険性は高いと言わざるを得ない。 そもそも、社会学的に見れば、裁判は紛争処理の儀式、秩序回復の装置にすぎない。つまり、けじめをつけること。それによって、犯罪から生まれた不均衡状態を終結させるのが裁判だ。社会を再起動させるシステムと言ってもいい。 そのため、悲劇を未然に防ぐための役割は、裁判には