死に瀕した老人がベッドに横たわっている。そのそばで意味師が話を続ける。 「……あなたが7才のとき拾ってやれなかったあの仔猫ですが、実はあの後……」 意味師は死にゆく人間に人生の意味を説く。 もちろん、宗教のような抽象論・一般論で人生の意味を語るのではない。その人間個人の全ログを、拡散した情報ミームの逆算から精緻に調査し、彼や彼女が不条理や不明瞭を感じていたすべての事象について、その意味を、その必然を説いて聞かせるのだった。 「……これがあなたの人生の物語のすべてです。その人生はあらゆる面で意味のあるものでした」 意味師がお定まりの締め口上を述べると、ベッドの老人は穏やかな笑みをうかべ満足そうに死に逝く。 だが意味師は死出の旅人を気持ちよく送り出すためだけに人生の意味を語るのではない。 ぐったりしたままの死体をベッドから抱き起こし椅子に座らせ頭を固定する。シェービングローションを頭に丁寧に塗