2015年5月30日20時23分、小笠原諸島西方沖、深さ約680kmを震源とするマグニチュード8.1(気象庁)の地震(以下、「小笠原沖地震」と呼ぶ)が起こった。気象庁の観測史上初、47全都道府県で震度1以上を記録したので、驚いた人も少なくなかろう。地震は伊豆小笠原海溝から沈み込んだ太平洋プレートで起きたが、日本付近には太平洋プレート、フィリピン海プレートが沈み込んでおり、エネルギーの減衰が少ないこれらの沈み込むプレート(スラブ)内部を震動が伝わったため日本全国で大きな揺れとなった。しかしこの地震、他の点において世界に類を見ない不思議な地震である。 不思議その1:場所 図1: P波トモグラフィーの小笠原を通る東西断面図(断面の位置は図2参照)。P波伝搬速度の等深平均からのズレを色で表示し、青、赤はそれぞれ高速異常、低速異常を表す。冷たいスラブは高速異常としてイメージされる。白丸は過去の震源の