スズキのインド子会社、マルチ・スズキ(本社・ニューデリー)で発生した暴動は、アジアに進出する企業に「労使関係のリスクを痛感」(大手電機幹部)させた。賃上げを求めるストや身分制度など現地の社会事情に絡む問題から、企業を狙った脅迫まがいの事件まで、直面するトラブルは少なくない。低迷する日本経済を背景に、成長を続けるアジア市場への進出を加速する日本企業は、いっそうのリスク管理を迫られている。 ◇解明進まず、経営側に労組不信 「撮影は禁止だ」。暴動事件が起きたマルチ・スズキのマネサール工場(ハリヤナ州)にカメラを向けると、警備員が駆け寄ってきた。死者1人、負傷者約100人を出した現場は、放火で黒焦げとなった入り口の検問所が新しく整備されるなど、修復作業が始まっているが、異様な雰囲気は事件直後と変わらない。 暴動のきっかけは、若い従業員が管理職とけんかとなり、停職処分を受けたことだった。破壊の規模の