各国に衝撃が走ったのは5月。アジア開発銀行(ADB)が示したエネルギー向け融資政策の草案が、想定をはるかに超える厳しさだった。「いかなる新規の火力発電案件にも資金支援しない」と明記し、さらに「石炭火力設備のアップグレードや改修にも関わらない」と駄目を押した。 火力発電の新設が許されないとしても、「改修なら融資を受けられるのでは」との思惑も従来のアジア諸国にはあった。しかし、同じ石炭からより多くの電力を生み出す超々臨界圧(USC)のような設備への更新でも、原則として認められないことになる。 国際エネルギー機関(IEA)は2019年時点で、東南アジアのエネルギー需要が今後約20年で6割増えると予測していた。電源構成の4分の1は石炭が占め、その利用量は現在の9割増という絵を描いていた。石炭なら安価で、新興国にはもってこいだった。 ところが、この2年で世界はすっかり変わった。特に石炭火力は1キロワ