「博士」は英語で「Ph.D.」と書く。ドクター・オブ・フィロソフィの略。もともとは哲学博士という意味である。 その称号がふさわしい。臨床医と脳科学者の二つの顔を持ち、複雑系である人間の心のありかを探り、どう生きるかという永遠の問いの解明を天命とし、科学と感性が無縁ではないことを自ら体現してみせる。 東京大学医学部卒業後、臨床研修の場を米カリフォルニアに選んだ。18年間、ジャングル病院と呼ばれる巨大な郡病院の第一線で学び、最後はカリフォルニア大学脳神経学教授として教えた。人種、人生の坩堝の中で、コカイン常習者はもちろん、狂犬病まで診た。今でも自宅のあるサンフランシスコに戻れば、患者が列を成す。職業はと尋ねられれば、必ず「アメリカの臨床医」だと答える。 臨床の合間を縫って、研究でも卓越した成果を残すのが米国の一流の医者だ。脳の機能を映し出す核磁気共鳴装置の世界的権威としても知られ、1996年に
